第16話
2日間よく眠れていない。あの公園での出来事は夢であって欲しいと思っていた。
目覚めて1番に「アタシってまじ最悪だな」と、自分でもつぶやいてしまった。さすがにもう“呪文”は効かない。
胸のモヤモヤを吐き出したくて姉のところへ行った。今日は日曜日だから姉と恋人2人共家にいた。
「で、あんたは銀二の何に同情したの?」と、やはり姉は気になって聞く。
「それはどうでもいいじゃん。っていうかアタシ、同情したからじゃないし」と、返した。
結局アタシが悪いという判決が出たが、大したアドバイスももらえずお昼をご馳走になっただけで姉のマンションを後にした。
まだすっきりしないアタシは思い立って、
やはり姉同様、2人は銀二の何に同情したのかと聞いた。たしかに気になる点なのもわかるしその後の話の展開にも多少は関わる。けれど、親友とはいえ本人の同意なしに言うことはできない。
しかも、くどい様だが決して同情したからではない。
ずっと黙って話を聞いていた碧唯のパートナーが口を開いた。
「やっぱり、って、思って……」
「銀二くん、
アタシも碧唯もまさかというかんじで笑った。子供の頃から知ってて、仲良くて、でもそんな素振り1度だって見たこともなければ、言われたこともない。それはまさかだ。
他所から来た自分だから客観的にわかるというのが彼の分析だった。
だったとしても、もう手遅れだ。最悪な自分をさらして怒らせてしまった後だ。
そう言って2人の家を出た。
歩いて家に向かっていると風に乗ってフワっと香水のいい香りが漂ってきた。香りの元を追って顔を上げると、「桜子、ひさしぶりぃ」と、向こうから同級生の
紅美とも碧唯や銀二同様に幼馴染だが会うのは2、3年ぶりだった。彼女は銀座のクラブで働いていてその近くに住んでいるので、ほとんど地元にはいない。生活時間帯も違うので、地元の友達たちとは縁遠くなっていた。今日はたまたま用事で実家に寄ったという。
いつもだが、服も髪も綺麗で、これまた綺麗な長いネイルの華奢な手で高級バッグを持って素敵だった。
偶然会ったついでといっては何だが、紅美にも銀二とのことを相談した。もちろんあの部分は省略して。
「早めにちゃんと話合わないと、友達としても元に戻れなくなっちゃうよ。
もしそれ以上の関係になるんだとしても、なるべく早く話合わないとね」
と、優しく適切なアドバイスをくれた。
「その……銀二の何に同情したの?」
と、結局、紅美も聞く。笑ってごまかした。そして、同情したからではないと念をおした。
「がんばってね」
と、紅美はアタシの手をギュッと握り励ましてくれた。紅美の長い爪が当たって少し痛かった。
最近寝不足ってこともあったし、あちこち行って疲れたアタシはリビングのソファで眠ってしまった。
すると母が体を激しくゆすって起こした。どうやらうなされてたらしい。
「どんな夢みてたの?」
と、母は言った。そんなもの覚えてない。
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