第4話 クズは入学式へ②

 プラットフォームにはたくさんの新入生たちでごった返しになっていた。


 白を基調とした建物に、青白く光る電光掲示板――。


 未だに古臭さのある地上の駅とは違い、この世界のプラットフォームは地を踏むのが勿体なくなるほどに清潔な施設だった。


『ここは学園都市アンダーの中央に位置します、その名の通り中央駅です。東京地下第四高等学校前に停止する電車は一番線になります。一番線乗り場は正面五〇メートル先の右手にある階段を上った先にございます』


 黒水はテリスの言われたとおり、一番線乗り場へと向かった。


 人の波に飲まれそうになりながらも、なんとか一番線乗り場にたどり着く。


「にしても人が多いな。……疲れた、人酔いかな」


 一番線乗り場にも多くの人が電車を待っている。


 うっぷ、と喉が鳴り、口元に手を当てる黒水。


 こういう環境は久しぶりでちょっと苦手だ。


 これが毎日続かないといいのだが――。


 とかなんとか考えていると、黒水の隣で電車を待つ人が現れた。


「……ゲッ!」


 その隣の人を見て思わず声が漏れてしまった。


 目が合いそうになるが、すぐに黒水は俯き目を逸らす。


 その姿は一言でいうと、筋骨隆々の黒人男性。


 身長は二メートル近くあるのではないだろうか。


 体格も青いボディスーツが今にも引きちぎれそうなほど、くっきりと筋肉がわかる。


 ……しかもなぜかやけに鋭いサングラスをかけている。


 学生というよりは、要人のSPになったほうがお似合いである。


 なんでこんな人がこの世界にいるんだよっ……。


『一番線が中央駅に到着するまで残り三分になります』

「……はあ」


 さっきから隣からの圧で足の震えが止まらない。


 これは長い三分間になりそうだ。

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