ユウくんのヒ・ミ・ツ②

「ね、ねぇ。ちょっと」


 翌日の放課後。

 私はユウくんに呼び出されて、誰もいない廊下へ向かった。

 緊張気味に話しかけてくるユウくん。

 今日も、顔が真っ赤だ。


「あの……昨日のこと。あれ、そういうことじゃないからね!」

「そういうこと……?」

「じょ、女装が趣味とか、そういうんじゃないからね! ほら、学校では男子の格好をしてるでしょ? あれは、本当は嫌なのに仕方なく……」

「仕方なく……? じゃあ、強制されてる、ってこと? 嫌なら嫌って、ちゃんと伝えたほうがいいよ」

「ち、違う。嫌なわけじゃなくて……」

「嫌じゃないんだ?」

「ちょっと嫌なだけで……」

「ちょっと嫌なら、ちゃんと伝えたほうがいいよ」

「でも、嫌じゃなくて……」

「嫌じゃないんだ?」

「あんまり好きじゃないだけで……」

「あんまり好きじゃないなら、ちゃんと伝えたほうがいいよ」

「あぁ、もう! 好きなんです! 僕は、女の子の格好をするのが好きなんです!」


 彼の告白は、廊下の隅から隅まで響き渡った。


「でも、誰にも言わないでください! 秘密にしておいてください!」

「う、うん。分かったよ」


 私は、とりあえず頷いておいた。

 どうして秘密にしたいのか、よく分からなかったけれど……彼がそこまで言うなら、口は堅く閉ざしておこう。

 勿体もったいないなぁ……あんなに可愛いのに。

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