お父さんは赤白忍者

 私の同級生に、ユウくんという男の子がいる。

  彼のお父さんは、忍者の仕事をしているそうだ。

 この現代、忍者にはなかなかお目にかかれない。良い機会だと思った私は、ユウくんに質問してみることにした。


「えっとね……お父さんはいつも、巻物に筆で何か書いているよ。あと、偉い人に書状を届けたりとか……」


 なるほど、忍者っぽい。

 だが、あまりにも忍者すぎる。ザ・忍者。イメージ通りすぎて、逆に現実味が無い。

 書状を届ける、って言っても、今は電話やメールがある。手紙を送るなら、郵便屋さんがいるし。


「前は、手裏剣を持ち歩いていたんだけどね――」


 おっ、さらに忍者っぽい。


「今は、ビスケットに持ち替えたみたい。小腹が空いたときに食べるんだって」


 ……やっぱり手裏剣は難しいのか。

 そうだよね、危ないもんね。


「最近は、いろんな人から依頼を受けて、寝ている子の枕元に忍び寄るんだよ」


 え、こわッ。

 いや、それはそれで忍者っぽいのかな……?


「それで、枕元にプレゼントを置いて、去って行くんだよ。すごいでしょ、僕のお父さん」


 ……ん?

 それ、なんか違くない?

 忍者じゃないよね?


「ユウくんのお父さんって、普段はどんな服を着てるの?」

「服? もちろん、黒い忍者の服だよ」

「あ、じゃあ、やっぱり――」

「でも、時期によっては赤と白の目立つ服を着てるよ。どうしてだろう……忍者が派手な服を着るなんて、ちょっと変だよね?」

「……」


 どっちなのだろう。

 結局、どっちなのだろう。

 しかし、忍者にしろサンタにしろ――彼のお父さんが、少年少女たちにとって憧れの存在であることは、間違いないようだ。

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