冷たい愛

意思と裏腹に

 今日は終業式。――のはずなんだけど、ボクは牛河さんに呼ばれ、屋上にいた。


「あの、……終業式に出ないの? 怒られるよ」

「平気だよ。全校集会なんて、二人くらいサボったところで、誰も分からないから」


 給水塔の陰に隠れる形で、ボクは後ろから抱きしめられている。

 シャツ越しに指先で胸を撫でられ、額からこぼれた汗は、熱い舌で掬われた。


「夏休み。わたしの家にきてね。親は、いないから」

「……っ、い、いや、でも、仕事が……」

「サボりなよ。彼女がお願いしてるんだよ。ねえ。逆らわないで」


 ぎりっ。


 乳首を爪で挟まれ、体が縮こまる。

 ボクは炎天下の中で汗だくになり、牛河さんに貪られている。

 同じように、牛河さんも汗だくになって、互いの汗を拭い合う格好となった。


 首筋を擦り合わせ、シャツから込み上げたにおいを嗅がれる。

 恥ずかしさのあまり、両手で押さえると、今度はズボンに手を掛けられた。


「ねえ。ダメだよ。やめてっ」


 べちんっ。


 頬を叩かれ、情けない事にボクは仰向けに倒れてしまった。

 牛河さんは切なげに表情を歪め、「全部、わたしのだから」と、さらけ出した局部に顔を埋めてきた。


「き、汚いよ」

「汚く、ないもん」

「……う、やめ」


 股下から水音が鳴ると同時に、校内からはチャイムの音が聞こえる。

 滑りのある感触が局部全体に広がり、ボクは顔を上に向け、緑色のフェンスを見つめた。


 フェンスの網目越しに見える校舎は、太陽に照らされて白くなっている。


「……む……っ……ぢゅ……る……っ」

「う、あ。牛河、さん。……だめ、だって」


 ボクが知っている牛河さんは、もういなかった。

 タガが外れて別人になり、とても凶暴になっている。

 女子に言うのもなんだけど、牛河さんは間違いなく、ケダモノだった。


「……はぁ……ぁ……ぜんぶ……わたひ……の……」


 舌を這わせる牛河さんと目が合う。

 とろん、とした目つきに変わっていて、頬は桃色に染まっている。

 汗で張り付いた前髪は目元を覆い、隙間からは見える目は、ボクをジッと見つめていた。


「気持ち、良い?」

「う、うぅ」


 依然として、牛河さんに対しての恐怖心がある。

 一方で、優しい刺激は、ミサキさんとは違い、丹念でいて、貪る力強さがある。


「あ、ぐっ」

「ぎっ――」


 直で、歯を立てられた。

 幸い、甘噛みにしてくれて、噛み千切るほどの力加減ではない。

 歯の隙間から覗くのは、まるで別の生き物のように蠢く赤い舌。


 口の端からは大量の涎が溢れ出し、熱い吐息が敏感な所へ当たっている。


「ひもひ、ひい?」

「う、……うん」

「……んふ」


 嬉しそうに笑い、牛河さんは頭を深く沈めてくる。

 ボクの体は、牛河さんの暴力的な快楽に悦びの声を上げていた。

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