牛河の独占欲

 牛河さんに連れていかれたのは、生徒玄関――ではなかった。


「……う……しか……」

「しーっ。誰かきたら、水野くん退学になっちゃうよ」


 ボクは女子トイレの個室で、便器のカバーに座っている。

 ズボンは無理やり脱がされ、両手を縛る紐代わりに使われた。


「や、やめて。何するのさ」

「何する? ……ぷっ」


 牛河さんは腕を組んで、口角をつり上げた。

 てっきり、大笑いでもするのかと思ったが、牛河さんの笑顔が途中で硬直する。


「……それ、水野くんだよね」

「……え?」


 ぺちんっ!


 ボクはビックリして言葉を失った。

 いきなりビンタをされ、もう一度牛河さんの顔を見上げると、先ほどの引き攣った笑顔が消えていた。


 思わず、開きっぱなしにしている個室のドアにも目をくれた。

 今の音で、誰かがきたらと思うと、気が気じゃない。


「私さ、好きだって言ったよね」


 縛られた両手が震えてしまう。

 一体、何について怒られてるのか、さっぱり分からなかった。

 怖くて頭が真っ白になり、身を小さくする。


 けれど、足を閉じたのが悪かったのか、牛河さんはもう一度ビンタをしてきた。


「ここ数日、水野くんのせいで眠れないんだよね」

「ご、ごめ――」


 べちんっ。


「や、やめて、叩かないで!」


 べちぃっ。


 何度も頬を叩かれ、ボクは俯いた。


「牛河さ、どうして怒ってるの?」


 すると、牛河さんは屈んで、ボクの目を覗きこんでくる。


「水野くんが、……わたしの言う事を聞いてくれないから」

「……」

「やめてほしい?」

「う、うん」

「お願いの仕方あるでしょ?」


 髪を掴まれて、無理やり顔を上げられた。

 すぐ目の前には牛河さんの顔があり、鼻と鼻がくっ付いていた。


「や、やめて、くださ――んっ」


 下着越しに局部を優しく掴まれ、ボクは腰が震えてしまう。

 ミサキさんにイジメられて以降、敏感になってしまったのだ。


「女の子にイジメられて、本当に興奮しちゃうんだ」

「ち、ちが……」

「違わないよ。ほら」


 ぎゅぅっ。


「んぎっ」

「すっごい、ガチガチ」


 頬を擦り付け、牛河さんの熱い吐息が耳に掛かる。


「気持ち悪い」


 言葉とは裏腹に、牛河さんが優しく局部を刺激してくる。

 ミサキさんのは乱暴で、痛みと妙な感覚があった。

 だけど、牛河さんのは、局部全体に爪を走らせるように、ねっとりとしたものだった。


「どうして、濡れてるの? くすっ。女の子じゃあるまいし。水野くんって、やっぱり変だよ」

「ご、ごめん、……なさ」

「気持ち悪いよ。本当に気持ち悪い」

「……う、ぐすっ、……ごめ」


 情けなくて、つい涙が溢れてきた。

 それでも、牛河さんは止めてくれない。

 むしろ、行為がエスカレートしていた。


 下着の中に、冷たい感触が入ってくる。

 ひんやりとした指先に敏感な所が挟まれ、ゆっくりと動き出す。


「ねえ。水野くん。わたし達、付き合おうよ」

「……うぅ」


 答えられないでいると、突然口を奪われ、無理やり舌を吸い出される。

 牛河さんの与えてくる刺激は、ねっとりとしているのに、貪るように乱暴だ。


「どうせ。あの女のこと考えてたんでしょ?」


 涙や頬を舐められ、牛河さんがボクを抱きしめてくる。

 強い力に逆らえず、ボクは大きな胸の中で震えた。


「ダメだよ。水野くんはわたしだけのもの。イジメていいのは、わたしだけなんだから」

「……も、もう、やめ」

「んむっ」


 髪を掴まれ、頭の向きをコントロールされた。

 温かい舌が口の中を這い回り、ボクは興奮で赤く染まった牛河さんの顔を見上げる。


「興奮してるくせに」

「して、ない」

「嘘。……だったら」


 いつもの可憐な表情が、邪悪に笑う。

 牛河さんが股の間に顔を寄せると、膨らみを指でつついた。


「これ、……噛んじゃうよ」


 怖くて、ボクは震える事しかできなかった。


「あー……」

「だ、め。やだ。食べないで」

「ん、ぐっ」


 膨らみに歯が当たった途端、ボクは腰が大きく跳ねてしまう。


「ぐぅ、む、……ぢるっ……ん、にぃぃぃ」

「あ、ま、待って。それ以上、は」


 徐々に力が増していく。

 まるで万力に挟まれている気分だった。

 牛河さんはボクを上目で見つめ、強弱を繰り返して、甘噛みしてくる。


 乱暴で怖いのに、太ももを優しく撫でてきて、時々下着越しに舌の感触がした。


 そして、ぷっくらとした唇でも甘噛みをされ、ボクは我慢できずに腰が何度も跳ねてしまう。


「うぅ!」


 太ももで牛河さんの顔を挟んでしまうが、痙攣が止まらなかった。

 牛河さんは愛おしそうに、膨らみに鼻先を擦り付け、ボクを見上げた。


「……水野くんと、わたし。これで付き合うことになったから。浮気したら、……本当に怒るよ。分かった?」


 この時、初めてボクは女の子に乱暴されたのだと気づいた。

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