噛み癖の彼女
奴隷になってから一週間
「起立」
号令で我に返り、ボクは立ち上がる。
気が付けば、机の上には消しゴムのカスがたくさん落ちていた。
どうせ、誰かがイタズラで投げてきたんだろう。
「礼」
「ありがとうございました!」
変な規則だと思うけど、ボクの学校ではこれが普通だ。
いちいち、先生にお礼を言わないといけない。
まあ、それはいいんだけど、どうにも疲れが抜けなくてボクは一気に脱力した。
「……水野くん」
隣の席に座っている牛河さんが、顔を覗き込んでくる。
「大丈夫? 疲れてるみたいだけど」
「うん。まあ、平気だよ」
ミサキさんの家に通うようになってから、『一週間』が経った。
馬をやったり、犬の真似をしたり、叩かれたり、掃除をしたり。
まるで女王様に仕える使用人の気分だった。
「これ」
いきなり手を触られ、心臓が跳びはねる。
ボクの手の甲には、痣があった。
酷い痣ではないけど、薄く小さい痕だ。
叩かれた時に付いたものか。
痛くはないし、本当に平気なんだけど、牛河さんにとっては違うみたいだ。
「何でもないから」
手を引いて隠すと、牛河さんは「そう」と、心配そうにボクを見下ろす。
周りの生徒は帰り支度を済ませ、さっさと教室を出ていく。
部活がある人は、各自部室に向かっていく。
ボクは歩いて駅まで向かい、またミサキさんを出迎えなければいけない。
「水野くん。よかったら、一緒に帰らない?」
初めての誘いにボクは戸惑った。
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