ミサキさんの部屋

 ミサキさんはどこか変だ。

 普通は会ったばかりの人間を馬扱いしたり、いきなり暴力を振るってくるなんて考えられない。


 正直、ショックだった。

 ボクは確かに世間で言う所のイジメを受けている。

 でも、普通は傷に塩を塗る真似なんてしない。


「なんだよ、これ」


 今、ミサキさんはリビングで寝ている。

 ボクは言われた通りに掃除をしているのだが、一階を雑巾がけした後、箒とちり取りを持って、二階にやってきた。


 リビングから上がって、二つ目の部屋か。

 そこはミサキさんの部屋なんだろうけど、少し様子がおかしかった。


 部屋の中は、20畳半ほどの広さ。

 スペースの方が多い部屋は、大量のぬいぐるみで埋め尽くされていた。


「何で、みんな綿が飛び出してるんだろう」


 何かで切り裂かれた痕がある。

 ぬいぐるみは、腹から裂かれて、綿が外に出ていた。

 だ。


 本棚には、女子高生とは思えない本のラインナップ。

 医学書とか、解剖学。あとは、神学。

 難しい本ばかりだ。


 本棚の前にはゴミ袋があり、中は原型を崩したぬいぐるみが詰め込まれていた。


 他にはベッドの上に下着が散らかっていたり、テーブルの上はテストの答案用紙とか、ノートの切れ端とか、色々散らばってる。


 汚いという感想より、「ミサキさんってどういう人?」という言葉が頭に浮かぶ。


 ボクは散らばった紙を全てまとめて、テーブルの上に置き直す。

 それから、ぬいぐるみは捨てていいか分からなくて、部屋の端に整列。


 ホコリと綿を箒で掃き、部屋の中にあるゴミ袋へ入れた所で気づいた。


「あ、モップ持って来ればよかった」


 箒を床に置いて、部屋を出ようとする。

 ふと、扉の陰に目がいった。


 扉で見えなかったが、壁に何か貼ってあった。

 近づいて見てみると、それは家族写真。


 両親とミサキさんかな。

 神社を背景に笑顔で映っていた。

 カメラに向かってピースをしていて、本当はこんなに綺麗な笑顔を浮かべるんだ、と知ると、ボクは何とも言えない気持ちになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る