第8話 暴動
フォルツァ国に来て、一か月がたった。
「ウォルター王子、ビルト王がお呼びです」
「はい、今行きます」
隣の部屋から聞こえてくる話声に、私は耳を澄ませた。
しばらくして、ウォルター王子が帰ってきた。「ああ……」と嘆息を漏らしているのが分かり、私は少し考えた後、ウォルター王子に声をかけることにした。
ドアをノックする。
「誰ですか?」
疲れたような声でウォルター王子が返事をした。
「リネです」
私が名乗ると、ドアが開いた。ドアを開けたウォルター王子は低い声で「中へ」といったので、私は部屋の中に入った。すぐにウォルター王子はドアを閉め、鍵をかけた。
「どうされたのですか? ウォルター王子」
ウォルター王子は渋い顔をして、すこし間をおいてから答えた。
「実は、ペアデの城下町で暴動が起きているという報告がありました。父は軍隊を出して制圧すればいいと言ったのですが、私はそれに反対しました。説得すればよいと言ったのです。王は鼻で笑い、言いました。言葉で通じるのなら暴動など起こさない、と」
「……暴動……」
私は切ない思いでその言葉を聞いた。父がいたころには、民衆は笑顔にあふれ、暴動なんて思いもつかなかった。
「ペアデの民たちを殺すおつもりですか?」
「ですから、説得したいと……」
「王を殺しておいて?」
「……」
ウォルター王子はため息をついて、窓のそばの椅子に腰かけ、机に腕を置いた。
「父は……ビルト王は、説得でペアデの町を鎮めることが出来たら、ペアデの国を私に治めさせると言いました。
それを聞いて、私は思わず声を上げた。
「……私も、行きます!」
「駄目です、王女が生きていたと噂になったら……」
「これなら、大丈夫でしょう?」
私はそう言うと、はさみで自分の長い髪を切り、ショートカットになった。
「ペアデの民は、王と王妃はよく見ていたけど、私はあまり表には立っていませんでした。肖像画はどれも長い髪でかかれていましたから、こんな短い髪をした私が、ペアデ国の元王女だとは気づかないでしょう」
ウォルター王子はだまったまま、何かを考える表情で私をまじまじと見た。
そして、言った。
「分かりました。ペアデの暴動を説得するために、着いてきてください」
「ええ」
私たちは、翌日、ペアデ城に行くことを約束した。
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