涙と決めた心

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再会から数ヶ月で授かった、あの嬉しくも悲しい出来事から一年後。

どうすることも出来ない状況の中、二人の思いは少しずつ前へと動き出す。

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「これからずっとこんなのが続くの?」


ある日の仕事終わり、送っていった里美のマンションの自宅玄関で泣きながら訴えられた。

ここ数日、里美に元気がないのはわかっていたし仕事終わりの食事なんかも断られ、一緒に行かずそれぞれそのまま帰宅する日が続いていた。


「いつかは終わるだろ。病院の先生もずっと続くわけじゃないって言ってただろ?俺もなるべく支えるから一緒に頑張ろうな。」


修二もここ何日か暗い表情が続いていた聡美のことは気になっていたが、理由ははっきりしなかった。

二人の共通の友人である利佳子に手伝ってもらって里美の何がそうさせているのか探ってもらったが、いまいち原因はわからず。

そして先日わかったこと。

本人ですら把握していなかったのだから、周囲の人間に理解できるはずもなかったのだ。

里美の周囲で何かしら起きたのであろうと察していたのだが…こういうことだったのか。



「うっ、気持ち悪いの…」

「そうだよな。辛いよな。」


数日前、思わぬ出来事がきっかけで妊っていることが発覚した里美。

その日以降も仕事へは変わらず出勤していたが、日を重ねるにつれて体調は酷いものへと変わっていった。

気持ち悪いといいつつ、今すぐ嘔吐するとかそういうことではなく二日酔いのような胃から胸元の不快感が何日経っても治らないようなそんな状態らしい。

お腹に手を当て、辛そうな表情でそう訴える里美に対し、ここ数日優れない体調とモヤモヤした気持ちを一人抱え過ごしていたのかと思うとさすがの修二も申し訳なくなった。


「泣きたいほど辛いんだな。いつからそんなに辛くなった?」

「三日位前から…もう仕事中も手に付かないし多分何かしらミスしてるし、とにかく気持ち悪いのよ。」

「桃瀬はどうしたいの?耐えられないほど辛いなら、赤ちゃん諦める?」

「私は産みたいよ。けど急にこんなんなって、どうしたらいいのか私だってわかんないよ!修二にはわからないでしょ!」


床に座り込み、ひっくひっくと泣きながら答える里美。

もう、どうしようもないこの状態。

こんな風に自分に当たり散らしてくることなど、なかなか珍しい。

あまりの身体と体調の変化に里美は付いて行かれていないのだろう。

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未来への足跡《サイドストーリー》 アカリン@とあるカップルの家族誕生小説 @akarinrin123

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