who are you?

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一年にも満たない一人っ子生活を終え、ついに妹二人が家に帰って来る日。

長男亮二の変化はいかに…

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双子の愛梨と優梨が退院する。

亮二が産まれた日から丁度一年後、日本から遠く離れたドイツで暮らす修二は家族と離れ現地で任務に就いていた。

だが驚くことに来週中には日本に帰ってくるとのことで、あれだけ不安でいっぱいだった日々を振り返るとかなり拍子抜けだった。



あの日、予想はしていたものの予定日よりもだいぶ早くやって来たその痛みは、下腹部の奥からじわじわと感じる痛みから時間を掛けて腰を打ち砕く様な痛みへと変化した。

その前月、肋骨が折れたことも加わり、このまま全身が崩れるんじゃないかと思うほどの痛みに里美は泣き叫んだ。

そうなった原因も元気に育っている証なのだろうが、このまま下から産み出す痛みは想像したくも無かった。


下の子を妊娠すると歳の近い上の子は赤ちゃん返りをするとかって聞くけど、亮二はどうなるだろうか?

そもそも数週間前にやっと一歳になった亮二であり、この子も赤ちゃんなんだろうけど色々と反応が楽しみかもしれない。

最初で最後の、亮二のためだけのバースデーパーティーをパパとママ揃って祝ってあげられなかったことは後悔だけど、修二もドイツから祝ってくれたはずだ。



産まれてから今日まで、母乳を届けに行ったり亮二も病院へ行く事はあったけどNICU・GCUへは一緒に入れずにいたため、ちゃんとした対面は初めてなのだ。

そしていよいよ今日は愛梨と優梨、退院の日。

修二くんにもこの日を一緒に迎えてもらいたかったけど、海外出向中につきそれは叶わなかった。


「亮くん、おばあちゃんとお家で待っててね。」

「やぁーー!」


家で留守番をしてくれる母と待つよう伝えるが、嫌だと泣き喚き私から離れられない亮二。


「ママ、ちゃんと戻ってくるよ。亮くんお家で待っててくれるかな。後で赤ちゃん来るんだよ。」


赤ちゃんせんべいを手渡し落ち着かせると一度ぎゅっと亮二を抱きしめ、私は玄関を出て病院へと車を走らせた。



玄関のドアが開くと、ハイハイでやってくる亮二。

二人乗りベビーカーから赤ちゃんを抱き、私はその場にしゃがんで亮二見せた。


「亮くんただいま。ほら赤ちゃんだよ、小さいねぇ。」


ママが突然自分ではない赤ちゃんを抱っこしているのだ。

本人は理解ができていない様子だが、口をギュッととがらせ、『だれ?』というような表情で大きな瞳をぱちくりとさせる。


「亮くんの妹だよ。お兄ちゃん、優しくしてあげてね。」

「お母さん、亮二のことありがとう。愛梨と…この子が優梨です。」

「あらぁ!まだまだ小さいけど、重たくなったね。」


双子の入院中、何度か父と母も一緒に病院で面会をした。

誕生してからのこの二ヶ月、双子として母体の栄養を分け合いながら育ち、満足に成長できぬまま誕生した愛梨と優梨だったが懸念されていた身体の心配は最初の頃の呼吸器系以外、ほぼないまま逞しく成長を遂げてきた。

これも医師、看護師の力あってのもので感謝でいっぱいだった。


「お母さん、里美ちゃんにはいつも笑顔で子育てしてもらえたら嬉しいわ。ほら、私は子どもがいなかったじゃない?里美ちゃんとあゆちゃんが家に来てから、うちは笑顔がすごい増えたの。里美ちゃんには周りを明るくする力があると思うのよ。だから、この子達もきっと明るい子になってくれると思うわよ。」


「…ありがとう。」


私はほんのり顔を赤め、この言葉を忘れぬよう心に仕舞っておくことを決めた。

そのまま母に優梨を託し、ベビーカーから愛梨を下ろし抱くと亮二も私に抱っこを求め、両手に子どもを抱いた。

両手には抱えきれない小さな存在が三つ。

なんて幸せなのだろうか。

ベビーベッドに双子を寝かせると、兄になった亮二が突然泣き始めた。


「どうした!?亮くん抱っこしようか。」


リビングに座って亮二を抱きしめると、私は気づいた。

このベビーベッドは亮二が産まれてからの一年間、亮二だけの場所だったのだ。

夜寝るときは寝室だったが、日中のお昼寝の時や少し手を離したい時なんかはここが亮二の場所だった。

一年前、弱くてとても小さな亮二を連れて帰った日も今日と同じような気持ちだった事を思い出した。

新たな生活にワクワクしつつ、これから生活が変わるという漠然とした不安を抱き、夫である修二と二人、緊張しながらも大切に育ててきたこの一年間。

だが、今一番この瞬間の幸せを一緒に噛み締めているはずの夫はここにいなかった。

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