ミラーツイン
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可愛い可愛い子どもたち。
だが可愛いだけでは済まないのが育児だと気づく。
不安や心配事を抱きながら過ごす日々、修二は触れるべきではない事に触れ里美の心は乱れ始めていた。
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「にー!」っと口を横に開き、目を細めるその愛しい笑顔。
上下の小さな白い前歯が何とも愛おしい。
母親の髪質を受け継いだ双子の愛梨と優梨。
その癖っ毛は年頃になれば悩みとなるだろうが、そのクルクルとした赤ちゃん毛の柔らかな髪を二つに結うと女の子らしさが更に増し、その姿に修二は日々メロメロだった。
「ぱぱー!」
「亮二、ちゃんと食べろよー」
二人の妹たちのその横でフォークをぶんぶんと振り、修二を呼ぶ亮二に笑顔で手を振りかえす。
「…いやぁ、たまらんねぇ。」
目を細め、ニコニコと目の前に座る三人の子どもたちの姿を見つめ、幸せを噛み締める修二を目の前に里美は少々引き気味だった。
「ちょっとぉ、見てないで誰か一人でもいいから手伝ってくれる?」
「だってさ、こいつら見ててめちゃくちゃ可愛いんだもん。」
「修二くんが手伝ってくれたら早く終わるのよ。そこで見てたら皆気がそっち行っちゃうじゃない。」
里美は時々亮二のフォローをしつつ、少食な双子の口へスプーンを運ぶ。
「お口、あーんしてください。ゆーちゃんのご飯、ママが食べちゃうよ?」
食事の時間もそろそろ集中力の限界だろうか。
亮二は一人でスプーンやフォークを持ち、だいぶ上手に食べられるようになったが、何やら先程からエプロンのポケットに食べたくないのであろう野菜を入れ遊んでいるのだ。
「亮くーん?ちゃんと食べてないの、ママここから見てるよ?いい子にもぐもぐしないと。」
バツの悪そうな顔をしつつも、笑顔で交わすのは里美に似ている。
愛梨と優梨にはまだまだ食事のフォローが必要だ。
「愛梨はさ、左利きなのかね。いつも左手で受け取るし持つよな?」
「そうなのよね。別に直そうとかそういうつもりはないんだけど、このままで良いと思う?」
「利き手なんてどうしようもないだろ。無理矢理矯正する理由もないと思うぞ。」
修二も里美も右利きであり、利き手は遺伝するなんて話も聞いた事があるような気がしたが、この両親の元、突然変異の左利きが一人現れたのだ。
…
今、目の前のテレビの中の子育て番組で特集されているコーナー。
双子にはミラーツインと呼ばれる現象が見られる事があるらしい。
利き手や利き足、頭のつむじや身体のアザの位置なんかが対になる場合があるとのことで、修二と里美はその内容に真剣そのものたった。
「これさ、うちの子たちそうだよな?」
「愛梨は左利きっぽいものね。ちなみにね、二人でつむじ反対なんだよ。知ってた?」
まさに今、テレビの中で言われている事がそのまま目の前に存在する。
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一卵性の双子で起こる現象。
ミラーツインの場合、母親の子宮内で卵が受胎後、九〜十二日の間に二つに分裂する。
この際、双子は互いにミラーリングする。
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里美は自分の子宮内で知らぬ間にそんな事が起きていたとは知らず、苦しみ、悩み、涙し、そんな中でも母性を抱かせてくれた存在は、自ら奇跡の様な成長をしていたのだと知った。
自分が子を宿し産むということすら不思議なことなのに、一つの卵から二人が誕生してきた事は本当に奇跡だと思う。
育児は可愛いだけじゃ済まないが、この子達が産まれてきてからの人生の殆どは明るさと笑顔で溢れていた。
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