少しずつ…

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少しずつ母親としての階段を登り始めた里美。

父親としての実感がまだまだわかない修二も、まずは自分の嗜好品を断つことを決めた。

苦しむ里美に寄り添うためにも。

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「これからずっとこんなのが続くの…?」


ある日の仕事終わり、送って行った里美のマンションの自宅玄関で泣きながら訴えられた。

ここ数日、里美に元気がないのはわかっていたし仕事終わりの食事なんかも断られ、一緒に行かずそのまま帰宅する日が続いていた。


「いつかは終わるだろ。病院の先生もずっと続くわけじゃないって言ってただろ?俺もなるべく支えるから一緒に頑張ろうな。」


暗い表情が続いていた桃瀬のことは気になっていたが、どうにも理由ははっきりしなかった。

二人の共通の友人である利佳子に手伝ってもらって里美の何がそうさせているのか探ってもらったが、いまいち原因はわからず。

里美の周囲で何かしら起きたのであろうと察していたのだが…こういうことだったのか。



「んっ…気持ち悪いのよ…」

「そうだよな、辛いよな。」


数日前、思わぬ出来事がきっかけで妊っていることが発覚した里美。

きっと本人もどうすることも出来ないと分かっているはずだが、修二もありきたりな言葉しか返さずにいた。

その日以降も仕事へは変わらず出勤していたが、日を重ねるにつれて体調は酷いものへと変わっていった。

お腹に手を当て、辛そうな表情でそう伝える里美に対し、ここ数日優れない体調とモヤモヤした気持ちを一人抱え過ごしていたのかと思うとさすがの修二も申し訳なくなった。


「泣くことじゃないだろ。いつからそんなに辛くなった?」

「三日位前から…もう仕事中も手に付かないし多分何かしらミスしてるし、とにかく気持ち悪いんだよ。」


ひっくひっくと泣きながら答える里美。


「桃瀬はどうしたいの?耐えられないほど辛いなら、赤ちゃん堕ろす?」

「私は産みたいよ。けど、急にこんなんなって、どうしたらいいのかわかんないよ!修二にはわからないでしょ!」


あまりの身体と体調の変化に里美は付いて行かれていないのだろう。


「そりゃぁもちろん産んで欲しいけど、風邪じゃないしお腹にいるから薬だって好きに飲めないし。それでも仕事には行かなきゃいけないし立場的なものもあるのよ。」


修二は里美の立場はわかっていたし、万が一自分が優れない体調の中責任のある仕事を抱えていたら、おそらく無理をしてでも出勤するだろうと思った。


「…有給ってのはさ、必要な時のためにあるんだぞ?うまく使っていこうよ。あとさ、色々落ち着いたら結婚のことも考えないとな。これからやることはいっぱいあるぞ。」

「色々って何よ?」


「まぁ色々だよ。いっぱいあるだろ…桃瀬の親にも報告しなきゃだし、結婚の準備だったり子どものこともそうだろ。それに体調だってこれからどうなるかわかんないぞ。」


「結婚って…修二その気あるの?」

「しないのか?それで子ども産むつもりって、一人で産んで俺は必要ないってこと?」

「そうじゃないけど、修二にはそういう考えないと思ってたから…」

「いやぁ、俺にも責任はあるからなぁ。結婚したくないなら事実婚って形でもいいけど。」


修二は何かが気に触ったらしく、そう言いながら玄関を出て冷えた外へ消えて行った。

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