双子の力
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お腹の子たちのあまりの元気さにより小柄な母体は限界に近かった。
里美が涙を流すほどの状態となったその原因とは…◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
日付も変わりそうな時刻。
修二が玄関のドアを開け室内に入ると、奥のリビングには灯りが点っていた。
「ただいま。こんな時間まで珍しいな?」
「亮くん、夜泣きで起きたら寝なくなっちゃってお茶あげてたの。今夜は私も体動が激しくてお腹張っちゃって。」
女性というのは色々と大変だ。
修二も里美も身内に双子はいなかったのだが、賀城家の第二子としてやってきたのは双子だった。
双子を授かることについて遺伝的な影響があるとは聞いた事があったが、二人の場合は至って自然に授かった子たちであった。
「亮二、ねんねだぞ。桃瀬、お腹の痛みはないのか?」
「痛くはないんだけどね、張りはいつも通り。寝てると苦しいし気分転換。ビールでも飲む?取ってくるわよ。」
里美が立ち上がったその瞬間、予想もしない出来事が起きた。
…
「う゛っっ!」
その場に響く鈍い声。
「あっ、何!?大丈夫か?」
テーブルに里美の足がぶつかり、置かれたままのホットレモネードが僅かに溢れた。
「骨に…誰かの足が入ったっ…んんっ、ちょっと、これは…肋骨来たかも。」
「痛いの?」
「待って…痛たぁ。それより本当最近胎動が凄いのよ。」
里美は警戒するかの様に再度そっと座り直し、その場に一度横になる。
母体が女性の平均身長よりも低く小柄なことも影響しているのだろうか。
「これ、ちょっとマズい気がする。息するとめちゃくちゃ痛いんだけど…折れてるかも。」
「胎動で折れるなんてないだろ。」
「だって…息できない…」
最初は大袈裟と思っていたが、里美はどうにも本気らしい。
何せ涙を流し泣いているのだ。
「そんなにか…?亮二、パパの所おいで。」
修二は亮二を抱き上げると、一度里美を落ち着かせる。
「息するだけでも痛いよ…浅くしか息吸えないっ…」
「どうやら本気で痛そうだな?」
「だからさっきから言ってるじゃないの。痛いんだって…」
「病院行く?」
「明後日、検診あるけど…朝電話してみようかな。これ無理だよ。」
…
翌日、朝一で電話を掛けると優先的に診察をしてもらえる事となった。
「ほら、行かれるか?亮二はパパが抱っこだ。桃瀬、荷物はこれだけでいいのか?」
修二の出勤に合わせ、車で病院を経由してもらうのだ。
「もう全然寝られなかったわ。あっ!痛っ!あまり車揺らさないでくれる?痛いから。」
「そんなの無理だろ。」
修二は一応気を遣いながら運転をしたが、揺れずに走るなどなかなか出来ることではなかった。
「着いたぞ。」
亮二を抱き上げ、里美が助手席から降りるのをサポートする。
身体を反らせ気味にする方がまだ呼吸と痛みが楽になるらしく、まるで陣痛が来てしまった妊婦かの様な歩き方で院内へと向かった。
「すみません、今朝電話しました賀城です。」
「あ、賀城さんね。順番が来たらお呼びしますから三番の診察室前でお待ち下さい。」
浅い呼吸を繰り返し、診察室前のソファーには座らず立ったまま待機する。
身重の体ではあるが、立っていた方が胸元の痛みがないらしい。
「賀城里美さん、中にどうぞ。…ご主人もご一緒にどうぞ。」
中へ入ると医師はすでに状況を把握していた。
「赤ちゃんたちにやられたって?どの辺り?」
「この、ここの辺りで…」
「んー、骨折してるかもね。じゃあ検査に行ってきてね。お腹の周りは鉛のエプロンを掛けるし、放射線量も少ないから心配はいらないよ。」
地下のフロアへ移動し、レントゲン室へと案内される。
里美よりも幾つか若いように見える女性技師だ。
「ブラジャーにワイヤーが入っている様でしたらはずしてもらって、あとはアクセサリーも。
こちらの服に着替え終わったら教えてください。」
渡された衣類に着替えようにも、カーテンが閉じられたスペースはかなり狭くこのお腹ではあまりに動きにくい。
「着替え終わりましたー」
「はーい!ではちょっとエプロン掛けますね。ではこちらに…はい、このまま動かないでお願いします。」
撮影はすぐに終わり、着て来たワンピースへ着替えるとファイルを受け取り、再度産婦人科の受付へ行くよう案内を受けた。
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