おとまりなつやすみ
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幼稚園の夏休みを使い妹の奈々が泊まりにやってきた大学時代のある日。
はしゃぐ妹を寝かしつけ、その後は二人きりの時間のはずが…◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おにいちゃん、よる、さとみちゃんのこといじめてた!おねえちゃんないてたの。だいじょうぶだった?」
「あ…」
時刻はAM6時半。
子どもというのは休日であるほど起床時刻が早い。
そんな中、奈々の言う『泣いていた。』の意味を里美と修二はすぐに理解できた。
「お姉ちゃんな、夜悲しくなっちゃって、そっちの部屋で泣いてたんだ。ほら、奈々が寝てるのに起きちゃったら可哀想だろ?だけどお兄ちゃんが守ったから、もう大丈夫だ。」
「奈々ちゃん、ありがとね。お姉ちゃん、もう元気になったから大丈夫!」
…
幼稚園児にとって、今は長い夏休みの真っ最中。
この夏休みを使って、修二の妹、奈々が兄とその彼女が暮らすアパートへ泊まりに来ている。
両親を亡くし、普段は施設育ちの幼稚園児である奈々は日中一緒に出掛け、そのまま泊まるという約束の日を楽しみにしていた。
大学生の修二と里美が同棲するアパートは1LDK。
大学生の二人が綺麗で広い部屋を借りられるわけもなく、就寝スペースは修二が一人で暮らしていた頃のままの一人用ベッドがあるのみだ。
「さとみおねえちゃんとおにいちゃんと、おふろみんなではいるー!」
「奈々、ここのお家はみんなで入れるほど大きくないんだよ。お兄ちゃんも、もう少し大きいお風呂のお家に住みたいんだけどな。お風呂場、見てきてみ?」
駅前のファミレスで夕食を済ませアパートへ戻ると、無邪気に三人で風呂に入ると言い出した妹を何とかなだめ、大人二人で入ることが何とか可能なバスタブに奈々を含めて入ることを回避した。
「ほら、先にお兄ちゃんと入ろう。もう眠いだろ?」
「なな、さとみおねえちゃんといっしょがいいのに…」
「お姉ちゃんは後で一人でゆっくり入りたいんだよ。奈々はお兄ちゃんと先入るの。」
「やーだー!」
奈々は既に先ほどから眠そうな仕草をしており、元々垂れた目が更に垂れ、そして手で目元を擦り眠気に耐えているのは明らかだった。
「いいよ、私奈々ちゃんと先に二人で入ってくるから。」
「あー…悪いな。」
里美と奈々を先に風呂へ入らせると、その間にベッドを整える。
奈々のリュックからピンクのウサギが描かれたパジャマと子どもらしい小さな下着を出しておくと、浴室からはキャーキャーと楽しそうなはしゃぎ声が聞こえてきた。
「おねえちゃん、だいすきー!もう、ななのおねえちゃんになった?」
「そうだねぇ…本当のお姉ちゃんじゃないけど、私がお兄ちゃんと仲良しでいる間は奈々ちゃんのお姉ちゃんでいてあげられるよ。」
「…??」
どうやらまだ奈々には、その意味が理解できなかったらしい。
こんなに懐いてくれていても所詮他人であり、修二と別れることがあれば奈々と会うことなど無くなるだろう。
それにスマートフォンなどの連絡手段を持たない幼稚園児だ。
大学生同士の恋愛など、まだまだ先のことは分からない。
新たな恋をする時間だって、出会いだってこれから山ほどあり、互いの気持ちが揺れてしまえば別れることは大して難しくはない。
風呂から上がった二人、まずは奈々の世話に二人で取り掛かり、眠ってしまわぬうちに身支度と歯磨きを終わらせる。
「女の子は大変だよな、やること多くて。」
ドライヤーで妹の髪を乾かす修二。
ロングヘアの奈々だが、やはり子どもらしく細い髪であり乾くのも早く里美の髪より早く、その乾かす手つきも慣れたものだ。
「奈々ちゃん眠そうね。修二くん、奈々ちゃんベッドで良いわよね?」
「桃瀬と奈々でベッド使っていいぞ。俺は適当にその辺で寝るから。」
「そう?ごめんね。私、奈々ちゃんと添い寝してるから、修二くんお風呂どうぞ。」
今にも寝落ちそうな奈々をベッドに寝かせると、里美も年の離れた妹ができた気分になり甘えてくれる奈々の存在が愛しかった。
実際、里美にも七つ離れた妹がいるが、奈々とは別の可愛さでありまた少し違った。
そんなことを考えているうちに隣では小さな寝息が聞こえ始め、昼間水族館で購入したおみやげのカメのぬいぐるみを大事そうに抱えるその寝顔は、やはり修二と血の繋がりがあるのだと思わせる長いまつ毛と優しそうな目元なのだった。
照度を半分ほど落とした部屋でそんなことを思っていると、修二が風呂から上がってきた。
「奈々はもう寝たのか?はしゃいでたし、そりゃ疲れるか…」
「ほんと可愛いわね…寝顔が修二くんに似てる。」
「そうか?寝てる自分の顔はわかんないからな。それより女の子っつうのは大変だな…幼稚園児で何でこんなに荷物が多いんだよ。二泊で帰るんだぞ?」
確かにお気に入りのシールやヘアゴムなんかを昼間に見せてくれたことを思い出し、里美はそんな時期が自分にもあったような気がしてわからなくもなかった。
「分かる気がするなぁ…女の子は楽しいわよ。色々と大変だけどね。」
「髪も毎日乾かすんだろ?凄いよ。」
「何?修二くんもそのくらい髪長かったら乾かした方がいいわよ。それに将来女の子のお父さんになることだってあるのよ?今のうちに慣れておかないと。」
「桃瀬は最初どっちがいいの?女の子?男の子?」
「あ…あたし?んー、男の子かなぁ…」
里美は自分の子どものことなど今は全く考えられなかったが、自身が姉妹であることや、その下に弟がいれば男女共に揃い理想と思っていたこともあり、何となく男の子の存在に憧れを抱いていた。
「…けど、男の子三兄弟とかは大変よね?男女一人ずついたらいいかな。修二くんのところは兄妹で理想的じゃない。」
「…じゃあさ、子作りしてみる?」
「え……?」
子づくりとは、『あの』子づくりのことだろうか。
「赤ちゃんを作るってこと?」
「それしかないだろ?俺たちの子、どう思う?欲しくないか?」
「欲しくないわけじゃないけど…修二くんは今欲しいと思う?学生だよね?自分たちの生活でいっぱいいっぱいなのに、産んで育てるなんてできないと思うな。」
「俺は今にでも欲しいと思ってるさ。子ども好きだしな。もう就活してるし、いい所ばっかり受けてるから将来は不自由ないと思うけど?」
修二は自分の子ども時代や妹、奈々のこと、今となっては里美の存在もあり、本気で将来を見据えて就職先を選んでいたのだ。
友人の中には何処かしらへ就職できれば良いという者もいたが、親の会社に入る者、金融、大手企業、官庁など既に内定を取り始めている者もおり修二も返答を複数抱えていた。
修二と里美の通う、日本国内で学力トップの大学を卒業しても、将来安泰という考えは近頃では通用しなくなっているらしいが修二の選択はいつも大抵は正しかった。
「あっちの部屋、行こうか…」
里美は言われるがまま隣の部屋へ移り床に寝かせられると、部屋着越しに弄られだんだんと足が開いてゆく。
奈々が隣の部屋にいる手前、声は出せず衣擦れ音が部屋に広がる。
里美も修二の履く部屋着の前開きに手を入れると、そこには温かく固く太くいものが存在していた。
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