性別判明

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お腹の中にいる双子の性別が判明した。

後日、嬉しさのあまり修二が職場で見せた父親の姿は里美にとって意外なものだった。

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たった今、仕事から帰宅した夫。

そしてこれから私が報告すること。

彼がこの報告を耳にした途端にどうなるか、私は何となくわかっていた。



「今日も暑かったわよね。今月の電気代の請求、初めて一万円越えよ?嫌になっちゃう…」


この家で私と妹が同居していた頃も、修二くんと結婚して二人で生活を始めてからだって電気代が月に一万円を越えることなんて無くて、ついに今年の夏は初めて五桁の金額が記載された明細書を目にした。

それもそのはず。

去年出産して動きも活発になってきた息子がいて、この子を外で熱中症にさせるわけにもいかない。

前みたいにフルタイムでバリバリ働くことはできないし、自然と家にいる時間も長くなる。

何より今年の夏も再び妊婦の私にとってこの暑さは苦痛でしかなく、家でクーラーを掛けてグータラと過ごす毎日なのだ。

どこかへ涼を求めに出掛けても良いけれど、今の私にとっては体力的にも精神的にもそれは辛かった。

だけど、どうしても息子を連れて出なければならない外出といえば妊婦健診なのだが、亮二はベビーカー嫌い真っ只中で身重の私は抱っこでの移動をせざるを得なかった。

そして今日の健診で発覚した嬉しい出来事。


『性別判明』


本来ならばもっと早くに判っても良かったのだけれど、我が家の赤ちゃんたちはどうにも恥ずかしがり屋さんらしく確認することができずにいた。


数時間前


「体調は変わりないですか?」

「悪阻は落ち着いて来た気がしてたんですけど、やっぱまだ波がありますね。

けど、この子の時みたく入院する程じゃなくて良かったです。」


去年の秋に誕生した息子の時から引き続き担当医師としてお世話になっている女性産婦人科医。

たぶん二十代後半くらいで私と同世代なのだろう、会話のリズムが合い私は好きだった。

前回の妊娠は、本当に…本当に苦しくて、その後は仕事中の事故にも合って入院三昧の妊婦生活だった。

それがトラウマになっているのか、今回の妊婦生活にも漠然とした大きな不安が常に付き添っていて、加えて双子の妊娠という現実も加わり、この私が無事に産み育てることができるのだろうかとにかく不安でしかなかった。


「赤ちゃんたちが胃を圧迫しての吐き気があるのかも…この時期はどうしてもそういうことが起きますし。

悪阻は個人差あるし、今回は亮二くんがいるしお世話で気が紛れてたのかもしれないですね。それより…性別どうしましょう?聞いていきます?」


「あー!分かるなら知りたいです!!」


服が捲られ、ジェルが塗られた大きなお腹の上ではエコーを使った検査が始まる。


「じゃあね…ほらここがそう、見える?女の子。」

「うわぁ…女の子!?」


超音波の画像越しに見せられ、説明されればそうなのかもしれない女の子の形に私も胸が弾んだ。


「じゃあ、もう一人は…」

「もう一人の子も女の子よ。賀城さんの赤ちゃんたちは一卵性の双子だから同性なの。」

「ひゃぁ…」


言葉なのか何なのかわからない声が口から漏れると、夜帰宅した修二へどう伝えようか私の口元は緩みっぱなしだった。

診察を終えると、修二にたった今判明した事実をすぐに報告したかったが、やはり顔を見て反応を見てみたかった。


「亮くん、ママの赤ちゃんたち女の子なんだってよ。もうすぐお兄ちゃんだねぇ…」


帰りの車を運転しながら息子に話しかけるが、自分に妹ができることなど本人はわかっていない。

何せ、亮二自身がまだまだ赤ちゃんなのだから。

妹たちが産まれるからと言っても何かお手伝いができるような年齢でもなく、きっとまだまだ赤ちゃんの亮二を含め、三人まとめて怒涛の育児生活があと数年は続くであろうと覚悟していた。



そんなわけで私は今、修二くんにどうやって赤ちゃんたちの性別を伝えようか、切り出し方に悩んでいる。


「あのね、赤ちゃんのことなんだけど。」

「ん?今日健診だったろ?どうだった?また何かあった?」

「『また』って酷いわねぇ。そんないつも問題ばっかりじゃないわよ!どっちだったと思う?この子たち…」

「わかったのか!?」

「ねぇ、どっちだと思う?」


修二くんの嬉しそうな、元々のタレ目が垂れっぱなしでゆるゆるな顔。

リビングのソファーに座り亮二を自身の膝の上にサポートしながら立たせ、遊ばせながら一気に笑顔が溢れる。


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