第49話 パーティー方針決定
十層のシーサーペントゾーンで一日貯まる経験値は、今まで約二十四万程だった。
これは僕と紗月、澪先輩の三人で休みなく戦い続けた場合にこうなる。
僕もだけど、紗月も先輩も普段から体力づくりは頑張ってるらしく、体力的な問題はないので半日通して狩りをして、一時間の休憩を取って、また午後から夕方まで通して狩り続ける。
今日から四人目のメンバーとして姉さんが入ることで、狩る量が加速した。
僕を中心に先輩の魔法から近づいてきた魔物は紗月とシリウスが倒してくれて、余った魔物を僕が倒す。姉さんはというと、僕の挑発のギリギリの範囲でさらに外に向かって矢を放ってシーサーペントをおびき寄せる。それも相まって狩る量が三倍近くに膨れ上がった。
「一日経験値五十万なんて……こんな初めてだよ……」
「それにしてもすごい量が貯まるね? 私もだいぶ増えたけど、レベルが上がって、増える量は減ったかな?」
「レベル仕組み的に本人のレベルに依存するからね。僕はレベルが1だから魔物が強くなればなるほど得られる経験値が倍化していくから」
「ふふっ。やっぱり誠也くんってすごいね~経験値はどう使うの?」
「まずはみんなの防具を強化したいかな。【漆黒のローブ】は強化するだけでとても強くなるから。できればレベル30までみんなの分を先に上げたいな」
「30なんだ?」
「ああ。30まで上げれば、身体能力が上がるから、それで体の動かし方が変わるからね」
「あ~【鉄のブレスレット】で使っていたから分かるよ。実は【漆黒のローブ】の【同化】で【鉄のブレスレット】が使えなくなって、体が少し重いのよね」
「元々胴体のみだけど、【同化】すると全部になるのか?」
紗月は大きく頷いた。
なるほどな……【同化】で全身を覆っているし、もしやと思っていたけど、本当にその通りになってしまったな。それにしても全部が使えなくなると、選択肢が色々狭まってしまう気がするな。
「まず、みんなの分の30を優先しよう」
「誠也? 一つ提案だけどいいかな?」
「うん? どうしたの? 姉さん」
「せっかくならさ、上を攻略しない? 【漆黒のローブ】の強化だけでもどんどん強くなれるし、紗月ちゃんもレベルに見合わない強さを持っているんだから、わざわざ下限を考えて狩る必要はないと思う」
「なるほど……そうだね。明日から十一層に行こうか」
「うん。それができれば、半日で一層ずつ上ってもいいのかなと思う。みんなが厳しくなるところまで。そっちの方が紗月ちゃんもレベルを早く上げられるから」
「うん。今までは安全第一でやってきたけど、せっかく姉さんがメンバーに入ったのなら、膨大な経験と知識を頼りに、行けるとこまで行ってみるのもいいかも」
「私も賛成だよ~」
「も、もっと強くなれば魔法がたくさん……使える?」
「広範囲魔法連発も夢じゃないですね~」
「ひゃっほ~! 行く! 行く~!」
ダンジョンのこととなると先輩はいつもこうだな。
《スキル〖非戦闘モード(遠隔)〗を獲得しました。》
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〖非戦闘モード(遠隔)〗
パーティーメンバーのみ使用可能。
スキル〖非戦闘モード〗と同じ効果を持つ。
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「ぬわっ!?」
「どうしたの?」
「えっと……新しいスキルを手に入れて……」
「このタイミングで?」
「うん。僕もそれに驚いているよ。ちょっと試してみていい?」
「いいよ!」
パーティーメンバーとはいえ、ここまで信用してくれるのは嬉しい。姉さんなら無条件で信用してくれるだろうけど。
紗月に【漆黒のローブ】を渡して装備してもらう。
全身を覆った黒いローブは黒い装束に変身していく。さっきは気づかなかったけど、全身を覆う時、上半身も下半身も纏わりつくのがちょっとエロいな……。
隣で姉さんがジト目で僕を見つめる。
「じゃ、じゃあ、新しいスキル使うからな」
「うん!」
…………まさか非戦闘モードにしたら裸になりますとかないよね……?
念のため目を瞑って使ってみると、みんなから「すごい~!」と歓声が上がったので、目を開けた。無事に【非戦闘モード】が使えるようになったようで良かった。
「これって誠也くんが使ってるのと同じスキルだよね!?」
「うん。どうやらパーティーメンバーの装備を見えなくさせることもできるみたい。見えなくなった装備の能力は受け継いでいる代わりに、何を装備してもそれは反映されないから気を付けないといけないんだ。みんながやりたい方にするけど、どうする?」
「このままがいい!」
「私もそっちがいい!」
「ま、魔法が使えなく……なる?」
姉さんにも渡して【非戦闘モード】にしてもらった。
「武器は念のためにみんな自分で持ち歩いてね。武器もできるけど、自由にできる僕と違って何があっても遅いから。あと先輩。魔法はちゃんと使えますし、何なら【漆黒のローブ】を強化したら身体能力が上昇してもっと普段から動きやすくなると思います」
「じゃあする~! みんなお揃い~!」
魔法が使えるかが一番だけど、基本的にはみんなでが主だもんな。
思わず先輩の頭を優しく撫でてあげる。
「ふええ!? しょ、少年……きゅ、急に……ふにゅぅ……」
「うわっ!? またやっちまった! ご、ごめんなさい」
赤くなってもじもじしている先輩がめちゃくちゃ可愛い。
当然、左右からジト目で見つめるもう二人も無言の圧力で頭を突き出してきた。
あはは…………どうしてこうなった……。
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