第48話 黒ずくめの怪しい集団?
店でレベル1を確認して【同化】が確認できなかった防具はレベル破棄をして経験値を戻しても半分は減る計算になる。
買ってきた【漆黒のローブ】の三つは奇跡的に経験値がちょうど残っていて、三つともレベル1にして【同化】を使えるようにした。残り経験値は0になったけど、これで十分な気がしてきた。
後は普段狩りをしながら、【漆黒のローブ】のレベルを上げよう。
「誠也~」
「ん?」
「今日も一緒に風呂入ろう~」
「…………ここで脱ぐなああああ!」
まさかのリビングで脱ごうとする姉さんを何とか止める。本当に目に毒というか……。
「姉さん。姉さんはもう少し自分の可愛さを認識するべきだ」
「えっ……? せ、誠也が……デレた!?」
「デレてるんじゃなくて! 風呂に一緒に入りません! 先に入って!」
「え~」
「え~じゃないから! 目に毒だから! もう僕も高校生だから!!」
何とか姉さんを風呂場に押し込んで、溜息を吐いた。
◆
翌日。
姉さんと朝食を食べて、一緒に家を出る。
何だか二人で一緒に出かけるのも久しぶりだ。
姉さんは普段のままだと赤髪が非常に目立つので、髪の色を変える特殊な装備で黒髪に変えている。
それでも姉さんの美貌は非常に目立つので、大きめのサングラスとベレー帽を被っている。むしろもっと目立ってる気がするが、姉さんを最上位探索者セグレスと思う人はまずいないと思う。
最初に先輩のところに迎えに行って、今度はダンジョン入口に着くと、紗月が待っていてくれた。姉さんを待たせたくないから、家を出る前にメールがほしいと言われている。
「今日からセグレス様と……」
「私がセグレスじゃないよ……?」
「!? ご、ごめんなさい、夏鈴姉様」
「ふふっ。そんなに緊張しないで? 誠也の姉として、パーティーメンバーとして接してくれたら嬉しいな~それに私は弓を使うから、みんなの足を引っ張ると思うから」
「だ、大丈夫です! 姉様は私が守ります!」
紗月の目がものすごく光り輝いている。姉さんに憧れているのは知っていたけど、まさかここまで憧れているとはね。弟として嬉しく思う。
「みんなよろしくね~!」
「「はいっ!」」
みんなで一緒に十層に移動した。
紗月のとき同様に姉さんとのパーティー承認の画面が出て承認する。
外ではあまり感じなかったけど、近くに立つ姉さんからは、凄まじいオーラを感じてしまう。
最強探索者セグレス。最上位探索者セグレス。その名は伊達ではないと、隣に立つだけで分かる。
「ひとまず、持ってきた【漆黒のローブ】を渡すね」
みんなに【漆黒のローブ】を一つずつ渡して装着してもらう。
服の上から来ても装備できて、装備した三人の【漆黒のローブ】が彼女達の全身を覆い、姿を一気に変えていき、三人とも同じ姿になった。
下から上まで全身が真っ黒に変わり、まるで暗黒に生きる暗殺者のごとく、素肌は一つも見えない。ただ、みんなの身長が絶妙に違うので、誰が誰なのかくらいは簡単に分かる。
小さい順で、先輩、紗月、姉さんだ。先輩は百五十、紗月が百六十前半、姉さんが百六十後半だ。
僕もダークフルメイル姿になって並ぶと……何というか、とても禍々しい集団になった。
十層はわりと他のパーティーがいて、僕達が通る度にちらちらとこちらを見つめる。
まあ、見た目からして怪しそうな集団だもんな。
ダンジョン内だと、犯罪行為を行っても見つからないというのもあって、身構える人達もいるし、実際有名な犯罪クランもあるが、証拠不十分で捕まえるのは不可能と言われている。
姉さんは程々に矢を放って、あまり戦闘には参加せずにじっと僕達の戦いを観察していた。
最後のシーサーペントゾーンに着くと、姉さんが僕に抱きついた。
「思っていたよりもずっと誠也が強くて嬉しいな~!」
「うわあ!? 姉さん!?」
「だって! 誠也ったら、挑発でターゲットを調整しながら紗月ちゃんと澪ちゃんの距離を見ながら動いているもの! うんうん! 私が想像してたよりもずっとすごいリーダーだよ!」
「あ、あはは……」
「私も頑張らなくちゃ!」
そう話した姉さんは本格的に戦いに参加するようになった。
弓は本職ではないとはいえ、今までの戦闘経験や感性によって弓を放つまでの時間が短く、流れるような姿は見る者を見惚れさせるには十分だ。
まあ、全身黒ずくめの暗殺者みたいな姿じゃなければね。
それとみんな深くフードを被っていて、髪も見えない。身長差でしか見分けることができないのは【漆黒のローブ】の良さというべきか、悪さというべきか。
僕自身もダークフルメイルを展開していると誰なのか全然分からないはずだ。
お昼近くまで狩りを続けていると、フロアボスのキングシーサーペントが姿を現した。
「ひゃっは~! リーダー! キングシーサーペントだよっ! 戦おう~!」
僕の前の前でぴょんぴょんと飛ぶ少女のような行動に思わず苦笑いが零れる。
「姉さんも入ったことですし、以前も勝てたし、やりますか」
「やった~!」
まあ、僕としても逃すという選択肢はないけどね。
紗月も姉さんも問題なさそうなので、僕達は二度目のキングシーサーペント戦を始めた。
結果からいうと――――圧勝だった。
姉さんが入っただけだと思ってたし、武器も本職ではなく弓のはずなのに、戦いの才能は凄まじく、僕達の行動を
戦いが終わり、その場には前回もドロップした【真珠の盾】がドロップした。
「……二連続ドロップ? もしかして誰か【豪運】スキルでも持ってるの?」
「豪運とかはないけど、僕が装備した装備のレベルで運が上がるようになってるよ。しかも、パーティーメンバーが装備してくれた分も上がるみたい」
これに気付いたのも実は最近だったりする。やけに運の数値が高いなと思ったら、パーティーメンバーと一緒にダンジョンに入ると、メンバーが装備している装備のレベル次第で僕の運の数値が増えていることに気付いた。
それによってなのか、魔物を倒すとほとんど核を落とすし、フロアボスを倒す度にレア品を手に入れてきた。
「そっか……誠也のスキルってやっぱり装備のレベルを上げるだけではなく、その恩恵で本人も強くするスキルが備わっているんだね。しかも、今日の戦いを見る限り、誠也の攻撃は通常魔物よりもフロアボスとの戦いで非常に強い感じがしたんだけど、それもスキルなの?」
「う、うん。フロアボスに対してだけ発動するスキルがあって、これがあると弱点とか見えたりするんだ。すぐには見えないけど、多少ダメージを与えると見えるから」
「ヒレが吹き飛んだのはそのスキルのおかげね?」
僕は頷いて応えた。やはり姉さんって最上位探索者として、僕達の戦い方をちゃんと見て研究してくれたみたいだ。
「やっぱり……うちの誠也ったら、めちゃくちゃ凄いんだね……! うふふ。誠也が私の弟というよりは私が誠也の姉になる日も近いわね~うふふっ~!」
姉さんがどこか遠いところを見ながら喜んでいた。
喜んでくれるのなら越したことはないんだけど……姉さん、少し怖いよ?
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