第40話 爆増し始める獲得経験値

 次の日から毎日先輩を迎えに行って、先輩と一緒にダンジョンに向かう。


 朝一から狩りに行けるって興奮している先輩が「うひひひ」と笑い声を上げる。


 ダンジョンの前に来ると紗月がベンチから手を振ってくれる。


 紗月の家は、反対側なので迎えには行かずに、真ん中のダンジョン前に集合だ。


 ダンジョン前に着くと、シリウスが真っ先に紗月に抱きつく。


 美少女と子犬って……こう……絵になるよね。


 ダンジョンに入る前に【ダークフルメイル】のレベルを10から25に上昇させておく。


 それによって【魔力+500】【魔法耐性】【防御力+1500】が追加された上に、一番欲しがっていた性能――――【身体能力+50】が発動した。


 制服のレベル1の【身体能力+50】をダークフルメイルでも発動できるのは非常に大きい。


 さらに、普段【非戦闘モード】の時にも【身体能力+50】は発動するので、大助かりだ。


 念のため経験値のままにしておいたけど、昨日発動させておけばよかったとちょっとだけ後悔していた。


 準備も終わったので、僕達は六層にやってきた。


 一層から五層まではどこか現実味のある世界だった。


 それに比べて六層は、一気に変わって神秘的な森の中だった。


 地面には浅い川が流れていて、どこを歩いても水の上になる。水だというのに反射して何かが見えるわけではなく、ダンジョンならではの水に似た何かのようだ。


 さすがに飲む勇気はないが、触った感触は水と全く変わらない。


 森は五メートルほどの土壁が続いていて、迷路のようになっている。


 跳んでその上に上がることも出来そうだ。


 そして一番違う点は、森に生息している生物。本当に生きているか分からないけど、尻尾が光り輝くトンボだったり、全身が虹色に変化する小さなカエルだったり、魔物ではない生物があちらこちらに生息していた。


「幻想的……」


「六層に入った人はみんなそう思うよね」


「先輩もですか?」


「わ、私――――もそうだったよ!」


 いまの間! 絶対嘘でしょう!? 絶対どんな魔物が現れるかしか興味なかったと思う


「ここからは魔物の強さが一段跳ね上がる。代わりに経験値効率もよくなるので、頑張って行こう~!」


「「お~!」」


「うひひひ」


 やっぱり先輩はどこまでも先輩なのだ。


 水が流れている方向に歩き進むと、大きな亀形魔物がいて、倒してみる。


 初手は紗月の斬撃だが、意外にも硬くて弾かれた。


「弾かれた!?」


 動きはそれほど速くないので、紗月は余裕で避けていた。その時、亀の口に青色の光が灯った。


「紗月! 何か放たれる!」


「うん!」


 放たれた水の玉は――――もちろん、僕に直撃した。


 あぁ……挑発で僕に向いていたね。


「魔法耐性のおかげでまったくダメージはないよ」


 少し安堵した紗月が、今度は側面を斬る。


 攻撃が通ったので何度か斬ると倒せた。


「中々タフだね。あと遠距離攻撃は厄介かも?」


「そうだな。挑発でも射線上にいては当たっちゃうから、できるだけ射線を意識してね二人とも」


「「は~い」」


 それにしても、亀を倒して手に入った経験値は、なんと42も獲得することができた。


 下層のベビーワーウルフでさえ23だったのに、ほぼ二倍に近い。


 今までの仕組みなら、亀はベビーワーウルフよりもレベルが低いはずなのに、それでもこの高さ。


 それから導き出されるのは、六層からの魔物のベース経験値が倍増したことになる。


 亀をレベル11だと仮定すると、僕とのレベル差は10なので5倍獲得することになる。ベースが4から8に上昇したのなら、8の5倍は40だ。そこに本来の経験値8を三等分すれば、2ずつになる。それを足して42という計算になる。


 ただ、ベースの経験値が上がっても紗月にとっての経験値獲得量はあまり増えていないはずだ。


 パーティーメンバー三人は最も効率が悪いと言われていて、三人でも四人でも獲得経験値は一緒になるのだ。誰かもう一人パーティーメンバーが増えてくれるといいが、校内で僕達と組んでくれそうな人はいなさそうだ。


「さあ、行こう!」


 そして僕達の狩りが始まった。


 六層のどんどん進み色んな魔物を倒していった。


 お昼休憩は外で取り、また六層で狩りを行う。


 魔物のタフさが上昇したため、獲得経験値は倍増とはいかなかった。でも僕が手に入れた経験値量は非常に多くて、午前午後の二回の狩りで経験値十万も貯めることに成功した。


 残った経験値を全て使って、紗月の刀のレベルを最大の40まで引き上げた。


 これをたった一日でできるんだから驚きだ。

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