第31話 カリキュラムの決断
ついに入学して四週目に突入した。
今週までが探索者の強制授業の最後の週だ。
授業の合間の休みは、もっぱら探索者になるならないの話題が上がるが、Fクラスのみんなはおそらく探索者よりも進学を考えるはずだ。
僕は運よくスキルを手に入れて、紗月という仲間もできたし、姉さんから高級装備を買ってもらったのもあり、ダンジョン生活を難なく送れている。
けれど、彼らに関してはいまだ一層で、最初の壁と言われているアッシュラットに苦戦を強いられているようだ。
今日もお昼は紗月と一緒に食べてからダンジョンに向かった。
「双剣はレベル20だったよね?」
「うん。このまま30まで上げたいな」
四層の最終フロアでオークランサー達を倒せば、半日みっちりで10は上げられる。
予定通りなら今日で10まで上げられるはずだ。
四層に入って向かおうとした時、珍しく他の生徒が見えた。
「先輩達だね」
よくよく見ると、制服左胸元の校章の色が僕達と違う。二年生ということが一目で分かる。
彼らは僕達をチラッとみると小声で何かを話して離れていった。
明らかに避けられているのが分かる。
「誠也くん……ごめんね……」
「気にすることないよ。あの噂は姉さんのせいだし。それに、僕としてはこっちの方がいいかな~」
「こっちの方?」
「変に注目を集めたくないし、元々姉さんの存在もあまり知らされたくないから」
「ふふっ。夏鈴姉様のことがバレたら色々大変だもんね」
いつかバレることもあるだろうけど、できるだけ追いつけれるように頑張りたい。
いまは装備のレベル上げを最優先で頑張ろうと思う。
午後の授業で狩りを続けて、【スチール双剣】のレベルが最大の30になった。
火曜日の午後は、集めた経験値一万二千を使って、紗月に貸している刀のレベルを1から5に引き上げた。
水曜日は狩場を変えて四層から五層に変えた。五層でもまだ魔物は簡単に倒せるし、僕のダークフルメイルでも簡単に防げるので問題なく狩りを進められた。経験値は一万五千手に入ったので、紗月の刀のレベルを5から10に上昇させた。
木曜日はそのまま経験値を貯め続けた。
そして金曜日になった。
「今日で最後の探索者カリキュラムになる! 来週からはカリキュラムを選択できるようになるので、今日残りでちゃんと考えておくように。授業が終わったら選択してもらい、来週からのカリキュラムでクラス分けになるから、そのように!」
「「「「はいっ!」」」」
クラスメイト達が全員ダンジョンに入り、紗月がこちらに来るまでの間、先生が俺のところにきた。
「誠也。ダンジョン生活はどうだ? 仲間もできたみたいじゃないか」
「はい。素晴らしい仲間のおかげで、ダンジョン攻略もスムーズに進んでいます」
「ほお……いま何層を攻略中だ?」
「いまは五層です」
「五層!?」
先生はものすごく驚いた。
「ちょっと待て。Aクラスでもいま一番早いので三層だぞ……?」
「仲間がレベル成長限界値一位ですから」
「そりゃそうだが……あれか? 装備が整ってるとか?」
「それもあります。僕もですが、彼女も強い刀を持っているので」
「そうか……それなら、まぁ……あまり納得いかないが…………まるでセグレスの再来みたいだな」
セグレスという名前に一瞬ドキッとしたが、ちょうどタイミングよく紗月がやってきた。
「誠也くん、お待たせ~先生に来週からダンジョンカリキュラムでいくって伝えてきた~」
「あ、先生。僕も来週からのカリキュラムですが、ダンジョンカリキュラムでいきます」
「レベル1でか!? そっか……既に五層ってことは、戦えるってことか…………」
何かを考え込んだ先生は、「分かった。誠也の選択はダンジョンカリキュラムだな」と納得してくれて、選択シートに記入させてくれた。
これで晴れて来週からもダンジョン探索者としてカリキュラムを受けられる。
ダンジョンカリキュラムで一番変わるのは、授業の体形だ。
探索者を最優先したい国からの法律で、高校生からの探索者はあらゆることから優遇される。
本人が探索者に重きを置くとなれば、全ての授業が免除され、中には階層によって支援まで受けられる。
これは姉さんから受けているので、僕は受けていない。紗月も同じ理由で支援申請はしないと言っていた。
これなら毎日午前中も午後もダンジョンに入れる。
中にはダンジョンに入ると言いつつ、サボる生徒もいると聞いているが、それは結果的に自分の首を絞めることに繋がるので、先生から厳しくマークされるはずだ。
こうして金曜日も無事ダンジョンに入り、五層で経験値を貯めていく。
所々二年生の先輩のグループが見えるが、これはおそらく一年生で通常カリキュラムを受けて、二年生になって壁を越えて探索者を目指すグループだと思われる。
姉さん曰く、結構いるらしく、姉さんの時はそういう先輩達をごぼう抜きしていったから、嫌がられる原因の一つになったらしい。
できれば紗月には同じ思いはしてほしくないけど、もう手遅れというか、既に敬遠されているから仕方がない。
それならいっそのこと、上がれるところまで上がってしまおうと話し合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます