第28話 時には撤退する
翌日。授業が終わり、いつも通りにダンジョン三層にやってきた。
ちなみに非戦闘モードは部分判定になるので、ダークフルメイルとオークガード大盾を非戦闘モードにしたまま木剣を取り出すことができる。
これなら紗月と一緒にいても怪しまれないし、装備自体はしているので姉さんも納得してくれると思う。
「…………誠也くん。ちょっと違う気がするよ?」
「でもちゃんと装備はしてるから」
「う~ん…………でも危険な時はすぐに戦闘モードにしてね?」
「ああ。約束するよ」
体が軽くなったので、真っすぐレッドスライムゾーンにやってきた。
四層にもすぐに行けるんだけど、ここで紗月のレベルを10まで上げてしまおうという計画だ。
レベルというのは1が増えるたびに必要経験値が何倍も必要になるし、レッドスライムだとしてもレベルが9なら1しか獲得できない。
このまま四層に向かう手もあるが、紗月曰く、せめてレベルが9に上がってから行きたいとのことだ。現在は8で経験値は2ずつ入るはずだ。
オークガードの大盾のおかげで挑発が付いているので、ある程度範囲内に入ったレッドスライム達が僕に向かってやってくる。
僕は木剣で、紗月は刀で倒していく。
しばらく夢中になって倒していると、ものすごくドでかいレッドスライムが現れた。
「フロアボスだね」
「噂のレッドキングスライムか」
「うん。魔法攻撃をするから非常に強いって有名だね」
「ん…………せめてダークフルメイルのレベルが15になれば、挑戦できそうなんだけどな
」
「レベル15?」
「ああ。特殊効果で魔法耐性っていうのが着くみたいだからさ。まあ、ないものねだりしても仕方がない。危険そうなので、レッドキングスライムはやめておこう」
「そうね」
意外そうな表情を浮かべる紗月。僕だってそこまで戦闘狂ではない。一層と二層のフロアボスには何だか『勝てる気配』を感じたのだ。それがレッドキングスライムからは感じられない。
ならば勝てる気配が感じるまで強くなってやればいいだけの話。
そういや、以前紗月に抱きつかれてしまってうやむやになったけど、僕のマジックパックには二層フロアボスから拾った双剣がまだ入っているんだった。
「誠也くん? どうかしたの?」
「二層のフロアボスから落ちた双剣をまだ使ってないなと思ってな」
「あ~そういえば、そうだったね。すぐに使う?」
「いや、双剣だとオークガードの大盾が装備できないから、挑発が切れるのは防ぎたい。ダークフルメイルのレベルが5になるまでお預けだね」
「分かった~経験値稼ぎ頑張ろう~!」
紗月は右拳を上げて声高らかに話した。
フロアボスは最終ゾーンで魔物を一定数倒すと出現するのだが、出現して三十分放置すると勝手に消える仕組みになっている。
ちなみに各階層フロアボスが出るのは一体までとなっているので、ここにレッドキングスライムが現れた以上、レッドスライムゾーンでいくらレッドスライムを倒してもフロアボスは現れない。
逆順を辿って、またレッドスライムゾーンに向かって狩りを続ける。
ある程度倒すとまたレッドキングスライムが現れたので、また元の場所に移動する。
最終ゾーンまで移動だけでも二十分はかかるので、元の場所に戻る頃にはレッドキングスライムが消えているから、また現れるのだ。
その日はそれを繰り返して経験値を貯め続けた。
それから数日後の金曜日。
何とか経験値を四万貯めることに成功し、早速ダークフルメイルのレベルを5に上昇させた。
それによって【挑発】と【広範囲挑発】というものが発動する。
まず【挑発】は自動発動するスキルで、魔物のターゲットを強制的に引き付けるものだ。普段から使っているので使用感は変わらない。
距離はというと、大体
そして、初めて覚える【広範囲挑発】。これは自動発動ではなく、手動発動させるものだ。
範囲百メートルの魔物を一斉に呼びつけるスキルで、クールタイムは何と存在しない。使おうと思えば、何度でも連打できる。
これは以前【スキル図鑑】で見たことがあるスキルで、そこには数分のクールタイムがあると書いてたのに、装備の特殊効果だとクールタイムはないようだ。それに【挑発】も自動発動でもない。
「紗月。広範囲挑発を使ってみるよ」
「分かった!」
念のため鎧も戦闘モードにして使ってみる。
僕の体から不思議な赤い波が周囲に広がっていく。
次第に遠くから土煙が上がって、魔物達が僕に向かってやってくるのが見えた。
一度あの波に触れたものは、ずっと僕を狙ってるってことだな。挑発は前方にしか効果がないので、使う場所によっては便利かもしれない。
やってきた魔物を僕と紗月で手分けして倒して今日の狩りを終わりにした。
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