第15話 レベル1は盾役

 次の日。


 学校に来ると、チラチラと僕を見つめる視線を感じる。


 午前中の授業が終わって、いつも通り一人でご飯を食べようとしたその時、教室の玄関口でノックの音が聞こえてきて、窓から可愛らしい水無瀬さんの顔がこちらを見つめていた。


 急いで出迎える。


「水無瀬さん!?」


「え、えっと……お昼……一緒に食べようかなって……」


 恥ずかしそうに弁当を持って、ちらっと見上げる水無瀬さん。凄まじい程可愛い。


「うちの教室でいいの?」


「もちろん。どこでもいいよ」


「分かった。Aクラスだとうちより人数も多いだろうし、席も余ってるからどうぞ」


 九人しかいないが、教室の後部には使ってない机と椅子が複数重なっている。


 椅子を一つ持ってきて向かいに置くと、小さく「ありがとう」と言って座った。


 机の上に、水無瀬さんの弁当が置かれて、いつもよりも色鮮やかに見える。


 弁当を開くと、じっと僕の弁当を覗いてくる。


「それって、誠也くん・・・・が作ったの?」


 っ!? せ、誠也くん!?


 思わぬ言葉に心臓が激しく動いてしまった。


 昨日までは苗字で読んでたのに……急に名前で呼ばれると結構効く。


「う、うん。姉さんは料理できないから」


 すると、もじもじする水無瀬さんが意を決したように話した。


「おかず交換……してもいい?」


 !?!!??!?!?!!?


 その恥じらいながらちょっとした上目遣い。破壊力抜群に今にも鼻血が溢れそうになる。


「も、もちろん。好きなだけ食べてくれていいよ」


「えへへ~丁度二つずつあるから、半分こにできるね! 私のは私が作ったわけじゃないから申し訳ないんだけど……」


 そういえば、うちの事情は知られてしまったけど、彼女の事情は全く分からない。


「お母さんが作ってくれたの?」


 彼女は首を横に振った。


 ばあちゃんとかかな?


「メイドさんが作ってくれるの」


「メイド!?」


「う、うん……お父さんがメイドさんを雇っているから。両親ともに忙しくて」


「そっか。そういう家庭もあると聞いたことあるけど、実際聞くのは初めてだな」


「ふふっ。君が住んでいる場所にもたくさんいると思うよ?」


 あぁ…………たしかにたくさんいそうだ。


「メイドさんのお料理も美味しいけど、誠也くんの手料理が一番美味しいかな~」


「…………」


 ハッとなって、自分で言ったことに自分で恥ずかしがる水無瀬さんがまたまた可愛い。


 それからはお互いの弁当を共有しながら全て平らげた。


 食事が終わって今日もまたダンジョン授業に参加する。


 当然、出席確認を終えた水無瀬さんがやってきた。


 Aクラスの方が人数が多いけど、彼女の場合は一番目に確認されるので早いらしい。


 刺すような視線を潜り、彼女と共にダンジョンに入った。


 入場で一層ではなく二層なのは初めての経験なので、少し感動を覚える。


「今日から二層だね……!」


「ああ!」


 どうやら彼女も僕と同じ感想だったみたいだ。


 さっそく、森を避けながら歩き続ける。


 後から入った生徒も複数組いたけど、全員がAクラスの生徒達ばかりだった。


 制服ブレザーの左胸元に校章が描かれていて、その周囲に色が示されていて、その時の何年生なのか簡単に分かる。


 さらに校章の上にバッジを取り付けていて、AからEまではバッジを付けていて、Fクラスだけはバッジなしだ。


 二年生からは半数が探索者から離れるので上位の人でAからCクラスにまとめられるとのこと。


 残りはDからEクラスに分けられ、クラスの差はなく、みんな就職や進学のために勉強をする。


 ゴブリンゾーンを越えてハーピーゾーンを越えると、一層のオークよりも一回り大きなオークが見えた。右手に剣を、左手に盾を持っている。


「二層の壁と言われているオークナイトみたい。とにかく盾が厄介とのことだよ」


「調べてくれてありがとう」


 レベル成長限界値が高いことに奢らず、常に知識を入れて戦いに備える水無瀬さんは本当に凄いと思う。


「じゃあ、僕もそろそろ本気でいくよ」


 昨晩、姉さんに言ったら「前にあげた……でしょう?」と言われて忘れていたマジックパックの中からオークガードの大盾を取り出す。


「盾?」


「うん。一層で拾ったから、これでターゲットを集めるから、迎撃をお願いしていい?」


「分かった!」


 僕達が近づくと、オークナイト達が僕に向かって走ってくる。


 オークナイトは前衛の水無瀬さんを通り抜けて僕に向かってくる。


「あれ!? オークナイトが私を通り抜けた?」


「水無瀬さん! 後ろからやっちゃって!」


「う、うん!」


 後ろが無防備なオークナイトを水無瀬さんが刀で斬りつける。それでもオークナイト達は水無瀬さんを無視して僕に向かってきた。が、僕に着く前に水無瀬さん倒してくれた」


「誠也くん!? 何をしたの?」


「この盾がそういう仕様なんだ。気にせずにどんどん斬っちゃって」


「よく分からないけど、分かった!」


 それから僕達は次々とオークナイトを倒し続けた。


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 【オークガードの大盾Lv.1】

 カテゴリー:盾

 レアリティ:Dランク

 防御力+100、パリィ30%

 Lv1:挑発

 Lv3:防御力+100

 Lv7:耐性+70

 Lv10:広範囲挑発

 Lv15:パリィ20%

 Lv20:ノックバック防止

 Lv25:体力自動回復1

 Lv30:パリィ50%

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 オークナイトが僕しか狙わない秘密はオークガードの大盾のレベルを1にしたら、魔物を引きつく挑発が付いたからだ。

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