第26話
「……ふざけるな、誰が悪魔に手を貸すものか。神を愚弄するのか!」
ルシアの言葉。
それに対していの一番に反応したのは敬虔な仏教徒である高嶺蓮であった。
「それなら別に構わないわよ?究極的に言えば私たちとしてはどちらでもいいもの。人類が滅ぶのだとしたらまた人類に変わる霊長が現れるのを。この星で生まれないのならまた別の星で生命が芽吹くのを何千億単位で待ち続けるわ。私たちのしていることはどーせ何もせずにいたら壊れるおもちゃを使って最後に遊ぼうってだけだもの」
激昂する高嶺蓮に対するルシアの言葉はどこまでもふざけていた。
「私たち上位の悪魔、と言うより魔物は空気中にある魔力を染め上げることでその場に顕現できるの。イムの片割れを貴方たちに殺させたのはそれが理由。イムが死んだことでその体と魂が魔力となってこの場にぶちまけられ、それによってようやく超級の魔物を二人、顕現させられるようになっただけ、それも人間の魂を用いて作った僅かな結界内、京都だけ。私たちは京都でしか活動できないの」
「ふふふ……今の僕は弱弱すぎて色んなところ行けるけどね!まぁ、こんな状態で出歩きたいとは思わないけど」
「……私もいっぺんしんでみようかしら?」
「僕らスライムと違って回復できないルシアはやめとけ」
「堕天使に魂割りの秘術は重いですわよぉ?」
「まったく、つくづくスライムは規格外ね。まぁ、良いわ。本題に戻るわ。何が言いたいかっていうと、京都以外はこれまで通りよ。ちょっと地上にも魔物が出てくるくらい。私たちは京都から動けない……私たちの玩具になる気があるものは京都に来なさい、それが嫌なら京都には来ないこと。それだけよ。無理強いはするつもりないわ。京都に来てくれた子を目いっぱい愛でるわ。美味しいご飯を用意しとくわ。それに街は安全よ?私たちが守っているしね!」
ルシアは和葉たちに向けてではなくカメラに向かって告げる。
「私たちからは以上、あとはみんなに任せるわ。あっ、それと京都は無事よ、天皇もね。ということで私たちはこの辺で失礼するわ」
「んにゃ!?」
ルシアは和葉の膝の上に乗るイムをひょっいっと持ち上げ、それに続くようにしてマザーも席から立ち上がる。
「さぁ!京都の町をいい感じにするわよ!やっぱ日本らしさは残したいよね!」
「あっ!待って!今の僕は明確に男だから!女に見た目寄っているけど中性ではなく男!そこのところよろしく!」
「愛すべき子に幸せがあることを微力ながら祈っているわぁ」
「待って!?お姉さま!!!」
そして、嵐のように日本を混沌の渦に叩き込んだルシアにマザーにイムはそのまま忽然とその姿を消すのだった。
「お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」
アレナは取り残された。
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