第21話

 珠美の剣によって絶たれたイムの首。


「「……っ!!!」」


 無意識下か。

 和葉と珠美のふたりはほぼ反射的にイムの首へと自身の腕を伸ばす。

だかしかし、その二人の腕がイムの首へと伸びるよりも前に。

 

「「……ぁ」」


 イムの首が光となって消える。

 首だけではない、首を失ったイムの体までもが光となって消滅したのだ。

 

 魔物は死した際、その身を光へと変える。

 人へとその身を落としていたイムにとって、首の切断はそのまま致命傷となったのだ。


「……い、む」


「……ッ」


 二人は己が敵であったイムを倒した。

 しかし、二人に喜びはなく、ただただ目を伏せる。

 そして、それを前にする悠真たち勇者パーティーも喜びを露わにすることなく和葉と珠美のふたり同様に沈黙する。


「「……」」


 最終決着後とは思えぬお通夜の雰囲気が流れている中。


────よくぞ。


 一つの声が響き渡る。

 ダンジョン10階層など、節目となる階層を突破した時に人類へと祝福を授ける女性の声が。


────超級が一柱、『創造者』新なる懸濁粘性体。通称イムをよくぞ倒しました。人族の英雄たちよ。


 声が響き、イムの死を明確とする。

 そんな中で。


「「「「……ッ!?!?」」」」


「……いむ、くん?」


「……っ」


 爆発的な魔力が轟き、空気を震わす。


「あなた方に祝福を」


 魔物として絶大な力を持っていたイムとは比べ物にならないほどの魔力を溢れさせ、その驚異的な威圧感と神々しさを伴って。


「……あな、たは?」


 光とともに一柱の美しい女性がこの場へと舞い降りるのだった。

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