第20話

 たとえ、その身が魔物のものでなかったとしてもイムは変わらず反則的な強さを持っていた。


「やァ!!!」


「ハッ!!!」

 

 今のイムには圧倒的な速さも、圧倒的な力もないが、その代わりとして圧倒的な技量があった。

 拳ひとつで和葉と珠美の攻撃全てを受け流し続けていた。


「感が戻ってきた」


 そして、そんなイムのギアはさらに一段階上がる。


「……っ、うそ、でしょ!?」


「ここまでなの、万能の力は……ッ!」


 二人がかり、それも身体能力では今のイムよりも高い和葉と珠美の二人がかりであっても勝ちきれないどころか逆に押され出しているという現状に二人は驚愕する。


「……ふぅー」


 そんな二人に対してイムは軽口ひとつ叩くことなく、ただ淡々と二人を追い詰めていく。


「ラァァァァァ!!!」


 和葉は自らの体を巨大化させ、力押しへと走る。


「こんなところで負けるつもりは無いわ!」


 圧倒的な質量を持つ和葉の攻撃を受け流しきれなかったイムは後退し、その代わりとして巨大化した和葉の体へと大量の魔法をふらせて行く。


「きゃぁ!?」


「いてつけ!」


 大量の魔法を前にして慌てて体を元の大きさへと戻した和葉。

 そして、そんな彼女と交代するかのように珠美が冷気を起こす。


「……」


 それに対してイムは熱波を返し、その冷気を打ち消す。


「っし」


 和葉が巨大化したことを受けて一度は下がったイムだが、再び前に出るべく体に力を込めたその瞬間。



「聖剣エクスカリバーッ!!!」



 二人に集中しすぎているがあまり、その存在をイムが忘れてしまっていた悠真が聖剣を振るう。


「あっ……」


 悠亜の放った聖剣エクスカリバーはイムの左半身を大きく吹き飛ばす。


「今ッ!!!」


「しっ!!!」


 イムが崩れた。

 その隙を和葉と珠美が逃すはずもなかった。


「チィ!!!」


二人は一糸乱れぬ動きでイムへと迫り、その手にある武器を振るう。


「……ッ!!!!!」


 右から来た和葉の攻撃は無傷の右腕で完全に防ぎきった。

 しかし、左から来る珠美の攻撃を、聖剣エクスカリバーを受けて大きな損傷を負い、もはや上げることさえ出来なくなっていた左腕で捌くことは出来なかった。


「「……ぁ」」


「……ふっ」


 イムの首を、珠美の剣が通った。

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