第18話
イムの言葉を受け、珠美ほしばらくの間俯き、口を閉ざし続ける。
「……貴方も、イム君も友達よ」
その沈黙の果てに一言漏らす。
「いいわ」
そして、彼女は涙を拭い、視線を真っ直ぐイムへと向ける。
その瞳には迷いや弱さはなく、ただひとえに力強さが輝いていた。
「私は友達を守るし、友達の願いも叶えるわ。感謝して、私の全身全霊で殺してあげるわ、イム君」
「フッ、そうだ……それでいいんだよ!珠美ぃ!!!」
その言葉を受け、イムは心底楽しそうな笑みを浮かべる。
「和葉!私の言った通り、祝福は貯めているかしら!?」
そんなイムへと意識は向けたまま、珠美は和葉へと声をかける。
「う、うん!問題なく!」
突然話を振られた和葉は若干慌てながらも珠美の言葉に力強く頷く。
「今すぐ発動しなさい!これまで溜め込んだ祝福を全部イムに!」
「わかったわ!」
珠美の言葉に満身創痍の和葉は迷いなく頷き、自分のスキルを発動させる。
スキル『祝福』。
いつからか、珠美に言われてこれまでずっと使ってこなかった自身のスキルである祝福を、今まで使わず溜め込んできた祝福が全てをイムに向かって棒ける。
「私はずっと、スライムであるイムを警戒して使ってこなかった切り札がひとつあるのよ、使うことなんて、ないと思っていたんだけどね」
珠美は腰にぶら下げていた剣を抜きながら言葉を告げる。
「和葉からの祝福も友情も愛も!私からの崇拝も友情も愛もッ!!!全部反転なさい!」
珠美はこれまでずっと肌身離さずつけていたネックレスを取り、それを剣で切り捨てる。
これまでずっと使わずに溜め込み続けたスキルの力。
珠美が見つけた1つのズル、スキル効果の蓄積、その集大成。
「スキル『反転』ッ!!!」
珠美の発動したスキルにより、何もかもが反転する。
祝福も、崇拝も、友情も、愛も、その全てが敵となってイムへと襲いかかる。
「……ぁ?」
その効果は直ぐに現れた。
「こ、れは……?」
イムは膝をつき、鼻血を流し始めるのだった。
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