第16話
圧倒的な力を見せるイム。
どこまでも底なし、体力の底も見せず、結局として傷を一つとして与えることすらできなかったイムを前に前線で戦っていた鈴音と蓮夜は無様に地面へと倒れ、和葉と悠馬も今にも倒れそうな状態で立っていた。
「そろそろ終わりかな?」
満身創痍の様子の面々を見てイムは言葉を告げ、自分の背中から触手を伸ばす。
「……はぁはぁ」
そんなイムに対して、魔力の使い過ぎでもう魔法を使うことも出来ない桜の代わりに。
「その足を止めろ、『ブリザード』」
珠美が魔法を発動し、イムを止めようと足掻く。
「この程度?」
それに対してイムは首を傾げ、一瞬で吹雪を散らせる。
「……なんで」
そんなイムに対して、珠美は顔を俯かせたまま自分を挑発してくるイムへと視線を向けることもなく声を漏らす。
そこに抵抗する力も、戦おうという強い意思も感じられない。
「……なんで、こんなことをするの?」
「ふふっ。何を今更?」
あまりにも今更過ぎる疑問の声を上げる珠美に対してイムは失笑を浮かべる。
「だって、おかしいもん。イムは、スライムじゃないじゃん」
「……」
だが、続く形で珠美の口から出てきた言葉を受けて、そんなイムの表情から感情が消える。
そして、そんな珠美の言葉とイムの反応を受けて、他の人たちにも動揺が広がる。
「あ、あなたはは……閉じこもり気味だった私に希望を与え、楽しみを与え、生きる意味を与え、私は貴方の言葉で!貴方の言葉を受けて、ここにまで来たァ!あなたが道を示してくれたぁ!私は貴方の言葉があったからこそ冒険者の、配信者としての頂点を目指したの!あなたが私の全てでッ!私の目的が理由ッ!すべて……なのに、なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええああああああああ!!!」
珠美は涙ながらに絶叫する。
「……」
「なんで、なんでこんなことをするの!?タルタロスッ!!!」
タルタロス。
小説家、イラストレーター、動画投稿者なと様々な活動を行い、『万能』のスキルを持つ未来有望な若手冒険者であった牧ケ谷和人。
その動画上での名前を珠美は叫ぶのだった。
あとがき
カクヨム甲子園作!読んでぇ!どちらとも短編ですぐ読むことが出来ます。
『一つの本から始まるラブレター』
『https://kakuyomu.jp/works/16817330663174520007』
『集中力は蜜と愛の味』
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