第15話

 戦闘の方法を触手操作から徒手格闘へと移したイムはこれからが戦いの始まりだと言わんばかりに絶大な力で持って和葉と悠真の二人を相手に圧巻の強さを見せた。


「フッハッハッ!遅い、甘い、隙だらけぇ!」


「クソッタレがァ!」


 悠真が激昂のままに振るう聖剣はいとも容易くいなされる。


「ぐっ」


「はぁ!」


 腹にイムの蹴り喰らい、大きく吹き飛ばされた悠真と変わる形で和葉が巨大化した己の体でイムへと迫る。


「ただデカくなっただけじゃ意味ないよ?」


 自分よりもはるかに重い和葉をいとも容易くはじき飛ばしたイムはそのまま流れる形で和葉へと自身の触手を振るう。


「……」


「ちっ」


 地面に倒れ込む和葉へと追撃の手を強めようとしたイムへと鈴音が投げナイフを大量に投げつける。


「まともには喰らわんよ」


 鈴音の使う武器は全てにおいてギミックがたくさん仕掛けられている。

 今回、鈴音が使った投げナイフにもギミックがあると踏んだイムは一切の油断なくその全てをたたき落とし、地面の奥深くヘと沈める。


「いてつけ!」


「大海よ!」


 そんなイムに向かって後衛として戦う珠美と桜が彼に向かって魔法を放つ。

 大量の水の流れと吹雪が容赦なくイムの体を凍りつかせる。


「おぉー、寒い、寒い」


 イムはただ少しばかり身体を震わせただけで自らの体にまとわりつく氷を散らし、何事も無かったかのような表情をうかべる。


「聖剣エクスカリバー!」


「よっと……喰らえば喰らうほど次のダメージが上がっていくそれ、マジで面倒い」


 一度は蹴りを受けて地面を転がったが、それでも建て直した悠真が再びイムへと聖剣エクスカリバーを放つ。


「やぁ!!!」


 そして、聖剣エクスカリバーを回避したことで少しばかり体勢の崩れたイムへと和葉が巨大化した己の手を振るい、イムをまるで蝿のようにたたき落とす。


「ふふふ」


 和葉の手によって地面へと勢いよく叩きつけされ、それでもなお楽しそうな表情でイムは笑う。


「いいね、戦っているよ、今ァ!」


 立ち上がり、楽しそうに言葉を話すイムから疲れは感じられない。


「……ッ」


「……どこまで」


 既に激しくぶつかり、自分たちの体力も大きく使った。

 それでもなお一切の疲れも傷も見せず、どれだけのダメージを与えているのかも分からないイムを前にし、和葉と悠真の二人は冷や汗を垂らし、震えざるを得ないのだった。

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