第14話

 最初に動いたのイムであった。


「……ッ」

 

 イムから伸びる圧倒的な触手の数々が和葉たちへと襲い掛かってくる。


「無駄だよ!」 

 

 それに対して和葉は体を巨大化させ、腕の一振りで触手を薙ぎ払い、そのままイムとの距離を詰めて手に持った斧を彼に向かって振るう。


「……ッ」

 

 イムは和葉の攻撃に対して一切避けることなくそのまま喰らい、体を吹き飛ばす。

 

「……よっと」

 

 吹き飛ばされたイムの体はそのまま地面へと散らばり、そのままゆっくりと沈んでいく。

 そして、何もない地面から新しい体を生やし、この場で唯一の回復役である高峰蓮の首根っこを掴み、そのまま地面へと叩きつける。


「……がぽっ!?」

 

 高峰蓮が叩きつけられた地面は一人でに動き出し、そのまま窒息させるべくガッツリと絡みつく。


「聖剣エクスカリバー」

 

 そんなイムに向かって悠馬は聖剣でもって一振り。


「……ちょっと不味いかも?」

 

 かつては一切イムへと届かなかった悠馬の刃。

 しかし、千代田区ダンジョンで敗北し、イムに強制的に連行される形でやってきた京都の地で悠馬、そしてその他勇者パーティーの面々は大きく力を伸ばしていたのだ。

 そんな悠馬の刃は今、イムが無傷で耐えられるほど柔な刃ではなくなっていた。


「今、助けるわ」

 

 イムが高峰蓮から離れたのを確認した珠美が高峰蓮の元に寄って行く。


「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「はぁぁぁぁぁあぁあああああああああああああああああああ!!!」


 珠美が高峰蓮の救助活動を行っている間。

 悠馬と騎士王たる藤木蓮夜がイムとの距離を詰め、勢い強くイムとの近距離戦を務める。


「私もいるよ!」

 

 そして、その戦列に和葉も加わり、三人で猛烈に攻め立てていく。


「……っうし、減っている」


 イムが操る触手の数は徐々に減り、勢いを失っていく……だがしかし、イムの手札は何も背中より伸びる触手だけでではないのだ。


「んー、確かに成長している。されど、まだ届かない」

 

 イムは背中より伸ばしていた触手の再生を止め、徒手格闘の構えへと移行する。


「……ッ!?」

 

 一瞬で藤木蓮夜との距離を詰めたイムは彼を拳一つで地面へと叩きつけ、そのまま地面そのものが藤木蓮夜を捕食してしまう。


「やっぱこれが良いね」

 

 拳を握るイムは笑みを浮かべ、楽しそうに呟くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る