第12話

 形を変え、スライムのものへとその身を変えた天まで届くほどの巨大な摩天楼。

いや、摩天楼だけではない。


「「……ッ!?」」


 地面もだ。

 どこまでも続くと錯覚するほどの広大な砂漠はいつしか、青き大地へとその姿を変えていた。


「ま、まさか地面まで全部、イムちゃん……?」


 驚愕の表情と共に冷や汗を垂らしながら言葉を漏らす和葉。

 イムが規格外であることは当然、和葉たちも理解していた。

 それでもやはり、まさか自分の立つ場所全てがイムの体の一部であるとまではいくらなんでも想像出来なかった。


「……退却を」


 そんな中、完全武装した悠真が周りにいる冒険者たちに向かって声をかける。


「まだ、和葉はイムの言葉に同意していない。ここは未だ行間。イムの物語ではなく、ここで無意味に全てを殺すことはしないはずだ」


 悠真はこれ以上ないほど眉を顰めながら希望的観測を口にする。


「あっ、和葉と珠美。勇者パーティー以外は逃げていいよ?元々僕の望む役者じゃないしね」


 そんな悠真の希望的観測をイムは肯定する。


「今は結界を解いているから、いつでも逃げれるよ、どう?」


「……ど、どうって」


「……ッ」


「お、俺は……」


「逃げろ」


 迷う冒険者たちに対して悠真は一言。


「この現状で数は要らない。逃げて、情報を共有してくれ」


「そうだね。うん。逃げて欲しいかも」


 そして、そんな悠真の言葉に和葉は同意する。


「足でまといだと言うのなら仕方ない」


「で、では……」


「ご武運を」


 二人の言葉を受け、その他の冒険者は撤退の勧告を受け入れて撤退を開始する。


「あっ。みんなは逃げちゃダメだよ?逃げたら日本沈没させちゃうかも」


 そんな光景黙って見守るイムは和葉たちへと笑いながら牽制の言葉をかける。


「当然だよ」


 そんなイムの言葉に対して和葉は力強い言葉でうなづく。


「私は決して逃げない。最後まで向き合い、ここで決着をつけるよ!イムちゃん!」


「はっはっはっ!その意気だよ!和葉ァ!」


 その言葉を受け、イムは心底楽しそうな笑みを浮かべ、ハイテンションのままに言葉を告げるのであった。

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