第10話

 たとえ、想定以下の状況であっても冒険者のやることは変わらない。

 日本のために命をかける、だ。


「思ったよりも人数が多い……僕の分身体を考慮してのことかな?」


 各々が自分の武器の手入れを行い、攻略のための準備を行う中、さも当たり前ような表情で冒険者たちの間に混ざっていたイムが声を上げる。


「「「……ッ!?」」」


 あまりにも突然すぎる奇襲。

 想定外などという一言では収まりつかないような状況の中で、それでも冒険者たちは一糸乱れぬ動きで全員が戦闘態勢を取り、武器をイムへと向ける。


「はぁ、びっくり」


 剣を向けられるイムは表情ひとつ変えずに声を上げ、両手をあげる。


「ど、どうしてここに……」


「いや、暇だったもんで」


 冒険者の一人か困惑のままに漏らした声に対するイムの答えはふざけているとしか思えない適当なもの。


「いやぁー、ここからみんなの様子を見てても良かったんだけど、さすがに決戦前の準備をこっちだけが勝手に覗いているってのも不公平じゃん?だから見ないようにしてたんだけど、それじゃあ暇でさ。みんな集まっているようだから来ちゃった。それにしても随分と人を集めたものだね?ここまで集まるとは思ってなかったよ」


 ふざけているとしか思えぬ理由を話すイムに対して多くの冒険者が困惑の表情を浮かべる。


「まぁ、イムちゃんはそんな子だから……若干こうなるかな?とは思ってたよ。イムちゃんはこういう準備パートを大事にしないからね」


 そんな中でイムの奇行に慣れているアイオーンチャンネルの二人は苦笑しながら、口を開き、イムの方へと近付いていく。


「こんな行間は小説で書かんしね」


 どこまでもズレているイムの回答だが、彼はそうなのだ。


「僕は邪魔する気ないから、お構いなく」


 イムはそう言うと、当然のようにちぎった自分の体で椅子とテーブルを用意し、どこからかティーセットを取り出す。


「二人も飲む?」


「あ、うん。飲む」


「一緒させてもらうわ」


 イムの誘いに和葉と珠美は一切の躊躇なく頷き、彼と同じテーブルを囲うのだった。

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