第9話

 黒き太陽が天上で妖しく輝き、その下にはただ何もない砂漠がひたすらに続く。

 そんな中で、ひときわ輝く一つの巨大な建物があった。


「……ッ」


 天にまで届くほどの巨大な摩天楼が黒き太陽の下で不気味に佇んでいる。


「こ、ここが……京都?」

 

 京都に住んでいた多くの人。

 京都の歴史ある街並みに多くの文化財。

 京都の栄えていた街並み。

 京都にあった皇居。

 京都の美しい自然。

 京都にあった何もかもが消え、その姿を砂漠へと変え……ただ一つ、不気味な塔


「……すべてはイムに食われたよ。イムであればあの建物の頂点にいるはずだ。馬鹿は高いところを好むからな」

 

 衝撃な京都の光景を前に呆然としている和葉と珠美に対して悠馬は淡々と語っていくく。


「ま、待ってください!?」

 

 だが、そんな悠馬に対して声を張り上げるのは和葉と珠美を中心とする京都攻略メンバーに名を連ねる九州で活躍したとある一人の冒険者。


「そんなものはいない。俺が直接見たからな」


「そ、それでは我々の仕事は!?事前に用意されていた計画書……避難している避難所があるという場所は!?」


「それはイムの分身体を見つけた場所だ。君たちの仕事は最初からイムの分身体の討伐だ……ここは、な。地獄なんだよ」

 

 悠馬は自身へと向けられる言葉に対して淡々と説明しておく。


「この段階になっての宣言で申し訳ないが、ここが地獄だ。こここそが地獄だ。ここで達成できるのは大勢を救う英雄譚ではない。物語にも成り得ない、絶望的な弔い合戦だ。最強の魔物を相手にしてのな。京都にはイムが張った巨大な結界で覆われている……理解してくれ。これは日本が生きるか死ぬかの戦いでもある」


「「「……ッ」」」

 

「俺たちはここで命尽きるまで戦わなきゃいけない。それが国民からの期待と支援を受ける冒険者の義務だ」

 

 悠馬が語る言葉。

 英雄が、勇者が語る言葉は重く、この場にいる冒険者たちの中に重くのしかかってくる。


「大丈夫だよ!」


 そんな中、和葉は明るく元気に声を張り上げる。


「安心して、私がイムちゃんと決着をつけてくるから」

 

 和葉は三メートルを超える巨大な斧を構え、そう宣言するのだった。

 

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