第29話
ダンジョンを攻略するまで帰れま10のエンドレス行進。
僕は和葉たち二人をここ、千代田区ダンジョンを攻略させるまで帰らせる気は毛頭なく、長い間ダンジョン内で寝泊まりさえもさせるつもりであった。
ダンジョンには基本的に時間と言う概念などなく常に明るく、魔物の昼夜問わず活動しているため、ダンジョンでの寝泊まりは基本的に推奨されていないのだが、和葉たちには僕がいる。
配信は一度切り、僕の体で作った真っ暗な寝床を作り、そこに二人を寝かせて一人。
夜の見張り番をする僕は自分の分身体にこしかけ、ネットサーフィンをして時間を潰していた。
『ねぇ、私のことを殺さないわよね?……結構怖いのだけど』
そんな最中。
誰もいないダンジョン内に振動が起こり、声が発せられる。
「殺さないよ。なんで僕がわざわざ君を殺すのさ」
『……みんな、貴方のことを信用しているけど私は未だに貴方のことを信じていないんだから。何ていたって貴方は元、人間なのだから』
僕は何の驚きもなくいきなり響いてきた声との会話を続ける。
「そもそもの話として、僕らの行動は巡り巡って人類のためになる行動であろう?本気で人間と敵対するのであればともかく、ね?」
『むぅー』
僕の言葉に対して、何もない空間から不満げな言葉を帰ってくる。
「君がお姉さまと慕うあいつから交尾をせがまれるほどに好かれている僕へと嫉妬する気持ちもわかるが、ひとまずは抑えてくれよ」
『はぅわ!?』
揶揄うような僕の言葉に対して動揺したような声が返ってくる。
『……死んじゃえ!べぇ!一先ずは君のことを信用してあげるけど、私は完全に君のことを信じてあげないんだから!』
「ほいほーい」
捨て台詞的なものを吐いた後、ダンジョンに響いていた謎の声は消える。
「あの子から話しかけて来るなんて意外。珍しいこともあるもんだ。ちゃんと僕に配慮して魔物に命令を下して、僕を襲わないようにしてくれているし……デレ期かな?」
先ほどまでの話し相手。
それはこのダンジョンそのもの。
世界津々浦々に存在する数多のダンジョンそのものが一つの生物であり、僕らと同じ魔物が一柱である。
「んにゃー」
久しぶりに千代田区ダンジョンと交流した旨を連絡するため、僕はとある知人へと連絡取れるアプリを起動するのだった。
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