第28話

 道中。

 僕の童貞を捨てた発言のせいで一波乱あったりとちょくちょく大変な目にもあったが、それでも問題なく千代田区ダンジョン内を進むことが出来ていた。


「……はぁ、はぁ、これでダンジョン20階層突破、と」

 

「きつかったわね」

 

 ダンジョン20階層のボスである巨大な体躯を持つ人種にして神話の怪物『巨人』が一柱、ユミル。

 冷気を操り、氷河期すらも呼び寄せるほどの力を持った偉大なる巨人をご主人たちは何とか倒したのである。


「パンパカパーン!」


 激闘の果てに疲れ果てて地面に倒れこむ二人に向かって僕は元気よくファンファーレを口にしながら近づいていく。


「さぁ、大いなる試練を乗り越えし更なるステージに進んだ勇者よ」

 

 僕はあの子の代わりに二人へと声をかける。


「「……ッ!?」」

 

 僕の言葉を聞いた二人は驚愕に目を見開かせる。

 千代田区ダンジョンにおけるボス攻略。

 10階層、20階層、30階層、40階層、50階層とボスのいる部屋を攻略するごとに千代田区ダンジョンでは人間たちの間では『祝福』と呼ばれる特別な力を与えられる。

 それを知らせる声は荘厳な美しき女性の声なのである。


「な、なんでイムちゃんが……?」


「……」

 

 祝福の知らせを行う女性の声に変わり、僕がそれを告げていることに困惑し、疑問の表情を浮かべている二人へと僕は言葉を続ける。


「汝らに祝福を、汝らに、新たなる力を」

 

 僕の言葉が綴られると共に二人の体が光り輝き、祝福が与えられる。


「僕からの寵愛を受けし二人へと僕から最高峰の祝福をッ!」

 

 そして、僕はちょっぴりと二人に与えられる祝福に色をつけてあげる。

 

「よし、これでおっけー。祝福の儀は終わりだよ」


 祝福を与え終えた僕は二人にそう告げる。

 ご主人には『巨人化』の力が、珠美には『零度』の力が。

 それぞれ与えらえる。


「な、なんでイムくんが……?」


「僕ほどともなると祝福を与えることも出来ちゃうわけですわな。僕ってばちょー凄い子なので」


「……魔物。祝福………もしかしてあの女性も、いやダンジョンそのものが……むむっ」

 

 僕の言葉を受けて思考を高速に回し始める珠美となんかぼけぇーとしているご主人。


「さぁ、どんどん行くよ!二人には最下層である50階層にまで行ってもらうつもりだからね!」

  

 僕はそんな二人へと先に進むよう促すのだった。

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