第20話

 勇者の代わりとして精力的に動いているアイオーンチャンネルの二人。


「……タゲがそっちに移ったわ!」


「了解ッ!」

 

 荒野に佇む一匹の竜。

 空を自由に駆ける強大な翼を持ち、何者を通さぬ頑強な鱗を持ち、万物を噛み砕く牙を持ち、天にまで届くかと思うほどの巨躯を誇る一匹の竜。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 そんな竜へと和葉並びに珠美は挑んでいた。


「ブレスが来るわッ!」

 

 珠美は燃え盛る竜の口を見て警戒の声を上げると共に和葉の元へと逃げる。


「了解……隆起せよ!」

 

 和葉はその声を受け、最近使えるようになったばかりの魔法を発動。

 大地を変形させ、自分たちの身を守る一つの大きなドームとする。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


「……ッ」

 

 珠美が作ったそのドームは竜のブレスを受け止め、その火勢を散らしていく。


「……ァァァアアアアアアア」


 珠美の作り出したドームは見事竜のブレスを防ぎきった。


「天火の焔よ。すべてを燃やし尽くしなさい」

 

 竜の火勢の次は和葉と珠美のターンである。

 和葉と同じく魔法が使えるようになった珠美が攻撃魔法を発動し、竜を狙って業火が放たれる。

 その黒き炎は分厚い竜の鱗さえも包み込み、多大な被害を負わせる。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 黒き炎に焼かれ、悲鳴を上げながらその巨躯を地面へと転がせる竜。

 

「……ハァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 そんな竜に向かって身体を魔法で強化した和葉が。

 そのたぐいまれなる跳躍力でもってその場を駆け上り、天に昇る和葉はその手に握られている巨大な斧を竜の首に向かって振り下ろされる。


「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 魔法によって分厚い鉄の塊に覆われていたその斧はいともたやすく竜の首を打ち取った。


「ナイス!これで千代田区を除くすべての東京都の解放ね!」

 

 無事に竜を、とある高難易度のダンジョンのボスへと止めを刺した和葉へと珠美はねぎらいの言葉をかけ、彼女に近づいていく。

 

 第三次スタンピードより長いことで既に半年余り。

 未だイムが和葉たちの前に姿を現すことのないまま時間が過ぎ、彼女たちは無事に千代田区以外のダンジョンをすべて攻略し、東京のほとんどを開放することに成功したのだった。

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