第17話

 第三次スタンピードが起きてから早いことでもう一か月。

 未だに京都は連絡が取れず、強大なダンジョンが集中している東京では未だに多くの被害者が出ているが、それでも地方は比較的に安定し始めており、政府機能も名古屋に拠点を移して再開していた。


「大丈夫だからね……必ずお母さんの元に連れて行ってあげるから」


「うん……」


 そんな最中、驚異的な成長を遂げ、多くの優秀な冒険者が千代田区の一件で失った今。

 東京で最も強き冒険者と言われるまでになった和葉と珠美は日々人命救助とダンジョン攻略のために時間を割いていた。


「お母さんは、無事?」


「うん、無事だよ。安心してね。ちゃんと避難所にお母さんがいるから」

 

 和葉は今、避難所にいる娘がいなくなってしまったという母親の依頼を受け、一人。

 魔物が多く徘徊する危険なエリアに迷い込んでしまっていた小さな少女を見つけ出し、その子と共に避難所へと変える最中であった。


「良かった……」


 和葉の隣にいる少女は和葉の言葉を聞いてほっと一息を漏らす。


「ありがと、お姉ちゃん……助けにきてくれて」


「全然大丈夫だよ。これくらい当然だから」

 

 和葉は少女と共に楽しく会話をしながら安全ではなくなってしまった街を歩く。

 二人は仲良く手を繋いでおり、傍から見て仲の良い姉妹のようだった。


「へぇー。凄いんだね、お姉ちゃん……たくさんの魔物と戦って勝っちゃうんだなんて!」


「えへへ!私は凄いからね!そう、すごく強いんだよ!」


「良いなぁ……私もお姉ちゃんのように強くなれるかな?」


「心ちゃんがその気であれば絶対なれるよ!何なら私が教えてあげてもいいよ!」


「ほんと!?ありがと!」


 和葉の言葉に瞳を輝かせる少女。


「……え?」

 

 そんな少女と共に手を繋いで歩いていた和葉は……いきなり少女と繋いでいた己の手が軽くなったことに困惑しながら立ち止まり、視線を少女の方に向ける。


「え?」


 そこにあったもの。

 和葉と手を繋ぎ、楽しくおしゃべりしながら歩いていたはずの少女の手……その肘から先はなく、その小さな手の先には吹き上がる真っ赤な血しかなかった。




 あとがき


 少女とのストーリーをガッツリ描写するかと思ったけどやめた。

 割と和葉は少女と交流したって思っていてほしい。

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