第15話

 あれだけ大量にいた魔物たち。

 それらを一瞬で消滅させ、どこかへと走り去っていくイムを呆然と見送る和葉と珠美。

 

「って!今はイムちゃんに構っている暇じゃないよ!とりあえず逃げないと」


「そ、そうね……」

 

 だがしかし、二人は慌てて現実に立ち返り、この場から逃げ出すのであった。 


 ■■■■■

 

 千代田区の陥落と数多の高名な冒険者たちの喪失に勇者パーティーの所在不明。

 天皇陛下のおわす京都との連絡途絶。

 まさに希望が落ち、日本中に暗い影が落ちた瞬間であった。


「どうも、皆さんこんにちは。リーフだよ」


「リンタナよ。今日もカメラマンであるイムくんがいないから二人でお送りするわ。演出並びにカメラワークにおける質の低下は許して頂戴」


 そんな中でも確かに希望の芽は出てきていた。


「ということで今日も氾濫しているダンジョンを攻略していくわ、一度攻略されたダンジョンの氾濫は止まるってイムちゃんが言っていたからね」


「なんだかんでイムくんの言っていることは全部当たっているからね……ちょっとだけ癪ではあるけど、ここはイムくんの言葉にフルベッドよ」

 

 ありとあらゆる常識を塗り替えたスライムたるイムの飼い主であるリーフとその友達であるリンタナ。

 その二人が運営するアイオーンチャンネルは勇者なき今、人類に残った最後の希望である。

 

コメント

・今日も待っていたよ!

・やっぱあのスライムはいないのか…。

・マジで二人だけが最後の希望感ある。

・攻略したダンジョンの氾濫が止まるって情報はマジでデカかったよな。これのおかげで大したダンジョンもなかった地方は既に問題が終息しつつあるし。

・どれだけ魔物を倒しても止まることなく無限に出続けてきたのマジで絶望だったからな。解決策あってマジで助かった。

 

 こんな状況下にあってもなんとか生き残っているネット環境で今日も配信活動を行う二人を視聴者たちは喝采でもって迎え入れる。


「……そういえば、イムちゃんってば地上にも魔物が湧くようになるって話していたような」


「やめなさい。現実逃避しているんだから」


 余計なことを口走るリーフの口を止めるリンタナ。

 まだ若く、不安定でありながらも急速に成長を続ける二人は確かな足取りで事態の収束に向けて歩みを始めていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る