第12話

 悠馬くんからの連絡。 

 それは今回のダンジョンスタンピードにおいて、強力な魔物を排出し続ける日本最難関のダンジョンである千代田区ダンジョン。

 僕たちが基本的に配信する際に使っている千代田区ダンジョンのスタンピードを止めるために協力してほしいという旨の連絡であった。


「ふぅむ……私たちの力がいるほどの事態なのかしら。ここを守りながらちょっとずつここら辺のダンジョンを非活性化させていくつもりだったんだけど……」


「行った方が良いんじゃない?割と千代田区の方悲惨なことになっているよ?」


「え?そうなの?」


「うん……そうだね。イレギュラーエンカウントが地上の方に出てくる異常事態っぽいよ?僕も既に三体のイレギュラーエンカウントと出会っているよ。んー。ちょっと想像以上だなぁ」


 僕は珠美に対して自身の持つ情報を共有しながら、ちょっことだけ思考を回す。

 ……少しばかり出てくる魔物が多く、強い。もうだいぶ危険な水準にまで達しているのか?

 むむ……これ、間に合うのかなぁ?ちょっと僕の負担が増えそうで嫌なんだけど。


「ここを守るくらいなら僕もやるし、千代田区の方に行けばいいんじゃない?もうすでに珠美とご主人は一流の探索者と言って良い実力を兼ね備えている。二人が助けに行ってあげればかなりの戦力になってあげられると思うんだけど」


「え?動いてくれるの?」


「うん」

 

 僕は驚愕に目を見張る珠美の言葉に頷く。


「別に僕は率先して誰かを助けようとは思わないけど、自分の前にいる人くらいは守るよ……ここくらいは守るさ。僕の護衛は信用ならない?」


「この世界の何よりも頼もしいわ。最高の護衛よ。これなら何の心配もいらないわね。ということで和葉、いつも行っている千代田区の方に行くわよ」


「えっ?うん、良いよ」

 

 ボケーっとお菓子を頬張り、緑茶を飲んでほっと一息ついていたご主人は珠美の言葉に一瞬の驚きを見せた後、彼女の言葉に頷く。


「「……」」


 絶対、話聞いてなかったでしょ、ご主人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る