第11話

 ちょっと汚かったが、それでも珠美のおかげで完全に高校を掌握し、ここに避難してきた人たちを管理している僕たちはちょっとした王様気分だ。


「はっはっは!私たち選挙にも勝っていないのにこの自由さ!人への命令権!これが頂点!人の上に立ちし者の眺め!最高ね!」


 顕示欲、金銭欲、権力への渇望……割と下衆な心を自身の内側に飼っている珠美は高笑いを一つあげる。


「はっはっは!どんなドラマも作り放題!手始めに致命傷を負った彼女の薬を求める彼氏にパイプを持たせ、ダンジョンに突撃させよう!大切な人の命を背負う彼は自分の命が簡単に奪われる状況でどうするだろうか!実に心躍るドラマを僕に見せてくれるだろう!……ぁあ!筆が躍る!人間の姿はやはり素晴らしい!ペンが持ちやすいし、タイピングもしやすい!絵も小説も書きたい放題だ!」

 

 そして、僕もまた珠美の隣で高笑いを浮かべる。


「……趣味悪いよ、二人とも」

 

 アイオーンチャンネルの良心はもはやご主人ただ一人である。


「仕方ないよね……僕の業だよ」

 

 芸術家として楽しそうなドラマを求めることの何が悪いのだろうか?……え?リアルで求めるな?二次元に帰れ?

 ……うるせぇッ!!!二次元よりリアルの方はおもれぇだろうがァッ!!!


「まぁ……趣味が悪いのは理解しているわ。それでもこの短期間でここまでの存在になれたの。テンションが上がることくらい許して頂戴?……ふふふ。私たちの悪口を言った人間は強制的に退去させてやるわ」


「……もうそれ独裁政治だよ」


 珠美の言葉を聞いたご主人が至極当然な感想を漏らす。


「良いじゃない。私たちは最高峰のぶ……ん?」

 

 珠美の言葉の途中でスマホが通知を鳴らし、僕たち三人の意識がスマホの方へと向く。


「あっ、悠馬さんからだ」

 

 連絡してきたのは勇者の異名を持つ日本最強の男である悠馬くんからであった。


「最高峰の武力から連絡来たな」


「……いずれ、抜かすわ」

 

 珠美は僕の言葉を聞いてそっと視線を逸らしながら悠馬くんからの連絡が来た自身のスマホへと手を伸ばした。

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