第10話

「違うの、違うのよ。別にあれは私の趣味ってわけではないのよ。そうなの。あれは必要な行為であったの。避難所としての機能を高めてきたのは私たちであるけど、私たちの立場としてはただこの高校に通う生徒でしかないわ。だから、あの校長からここの主導権を渡してもらうためにあんなことして脅しつけていただけなの。主導権は私たちの方にあった方が色々と楽勝でしょう?それに、素人が主導するより私たちが主導するほうがいいに決まっているわ。えぇ。そうなの。だからね、あれは必要なことだったのよ。そう。だから誤解なの。すっごく誤解なの。別に私はあんなおっさんを足蹴りにして性的快感を覚えるような子じゃないのよ。そんな汚い子じゃないわ……どちらかと言うと私は好きな人から足蹴りされる方が……」


 校長を足蹴りにした珠美。

 校長室から校長を追い出した後、彼女は自分の行為について言い訳するように口を回していた。


「ご主人の教育に悪いので近づかないでもらえます?」


「違うのぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 珠美は僕の一言を聞いて崩れ落ちながら叫ぶ。


「まぁまぁ、イムちゃん。珠美が何をしていたのかはわからないけど、私たちにとって必要なことをしてくれていたんでしょ?ならお礼を言わないと。ありがとうね、珠美」

 

 ご主人は鞭を片手にハゲで太っていた半ケツの校長のケツを踏みつけて高笑いしていた珠美へと笑顔でお礼を口にする。


「見ろよ、ご主人を」


「……すみません」

 

 ご主人の純粋さと輝きを前に珠美は深々と頭を下げる。

 土下座の態勢である。

 

「いやいや!頭を下げなくて良いんだよ!?」

 

 そんな珠美に対してご主人は困惑しながら頭をあげるように口を開く。


「……ごめん、しばらくは頭を下げさせて」

 

 だが、それを断って珠美は土下座の態勢を維持し続ける。


「うん。下げた方が良いと思うよ。僕は」

 

 時として悪意よりも善意の方が凶悪なのである。

 珠美はしばらくの間、土下座しているのであった。

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