第8話

 第三次迷宮大反乱。

 ダンジョンスタンピード。

 鳴り響く警報と共に上がる悲鳴の数々と醜悪な魔物の鳴き声。


「イムちゃん!目の前の人たちを助けてあげて!」


「りょー」


 人の状態でご主人と並んで走る僕は彼女の命令に従って、自分の体からまるで触手のようにスライムを伸ばして今まさに一組の家族へと襲いかかろうとしていた魔物を叩き潰す。


「この近くの高校の方に避難してください!避難所としての機能は一番優れているはずです!」

 

「護衛としてスライムあげるよ」

 

 サクッと助けてあげた家族に対してご主人は非難するよう促し、僕はスライムを一つ分けてあげる。


「……もう結構魔物いるわね」

 

 ご主人は眉を顰めながら口を開く。


「そうだね。思ったよりも魔物いる……なんか普通にすべてのダンジョンから魔物溢れ出しているし」


 現在、日本に存在するダンジョンの数は全部で500を超える……そのうち、ダンジョンスタンピードでは基本的に50くらいのダンジョンからしか魔物は出てこないはずなのだが……なんか今回はすべてのダンジョンから魔物が出てきている。

 ちょっと想定外。思ったよりもヤバい状況と言えるのかも知れない。


「むむっ。じゃあ、規模の低いダンジョンから機能を停止させていかないとかな」


「そうなるかも」

 

 ダンジョンには何十層もある巨大なダンジョンと二層しかないような小さなダンジョンもある。

 ダンジョンの最下層にいるボスの魔物を倒せば一時的にそのダンジョンは機能が停止され、当然ダンジョンスタンピードも止まる。


「よし!じゃあ、珠美ちゃんが市民の避難誘導している間にどんどんダンジョン潰して行くよ!かと言って急いで死んじゃったら元も子もないからゆっくり確実に!……ってことでおばあちゃん団子一つ!いくらかな?」

 

「はぇぇ?」

 

 今まさに逃げようとして……その足腰の悪さから逃げるのに遅れてしまい、店の影で震えていた和菓子屋のおばあちゃんへとご主人は声をかける。


「お題はお金と何にでも使えるもうひとりの僕でいかが?あっ、僕は栗の饅頭が良いな」


 そんなご主人に続いてスライムを手に持ちながら僕も和菓子屋のおばあちゃんへと声をかけた。

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