第33話
フェンリルの馬乗りになってひたすらに拳を振り下ろし続けるご主人。
「くぅん、くぅん!?」
さしもの多くの探索者と戦った歴戦の獣たるフェンリルとて人間に馬乗りにされ、フルボッコにされ続けることになるとは露にも思わなかったことであろう。
フェンリルはただただ困惑の表情を浮かべて、殴られるがままになっている。
今頃彼の頭の中は真っ白だろう。
「え、えぇ……」
『え?何しているの?』
コメント
・え?何してんの?
・は?
・どういうこと?
・え?
・正気か?
・全員ドン引きで草
・やばぁ
・え?
・魔物に馬乗りとか脳筋すぎでしょ
ご主人の凶行に困惑し、呆れているのは何もフェンリルだけではない。
珠美や僕、視聴者。
今、この光景を前にする全員がそうであった。
「キャンッ!」
『って、いつまでも呆けている場合じゃないねッ!』
だが、いつまでも困惑し、何もしないでいるわけにもいかない。
ようやく現実に立ち返ってご主人を弾き飛ばそうとするフェンリルの動きを僕は先んじて魔法で止める。
「キャン!?」
「はぁッ!」
そして、珠美も動く。
だらしなく地面に垂れているフェンリルの足に向かって珠美は剣を振り下ろし、大きく斬り裂く。
珠美の力強い一太刀を受けたフェンリルの足は絶たれたとはいわぬまでも、それでも十分すぎるほどの傷を負っている。
「アォーンッ!!!」
相手を痺れさせる僕の魔法を喰らい、ザックリと足を珠美に斬り裂かれてもなおフェンリルは止まらず、強引に自分の上にいるご主人を強引に押しのけて、震える足を地につける。
『風よ』
風が吹き、斧が舞う。
「……くぅん」
フェンリルは血に塗れ、力ない足を動かし、跳躍する。
跳躍できただけでも褒めるべきだろうか。
いや、そんなものには何の意味もないだろう。
「だぁ……」
万全の状態であれば間違いなく逃げ切れたタイミング。
だが、今の今では避けれない。
「せいやッ!!!」
僕の魔法によってご主人の元へと届けられた一度は捨てられし斧をご主人は勢いよく振り下ろし、フェンリルの首を落とした。
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