第34話
ダンジョン10階層のボスであるフェンリルの討伐。
少しばかり予想外の一幕もあったが、見事ご主人の大活躍によって勝利を収めることに成功した。
────ここに、貴方が来るとは思いませんでした。
僕は元々人なんだぞ、来るに決まっているだろう。
────それでも、です。
君の驚きなんて僕の知ったことではないよ。
僕の個人チャットなんて良いから、早いこと終わらせてよ……何も起こらない現状を前に珠美も視聴者も
────少しばかり貴方との会話を楽しみたかったのですが。
あいにくと僕は君との会話を望むほど人に飢えてなどいない……ちょいちょい交信してやるから、さっさと済ませてくれ。
────約束ですよ。
フェンリルを討伐すると同時に僕の脳内へと直接響いてきた声が遠のき、その代わりとしてこの場に神々しい光の幕が降りる。
───大いなる試練を乗り越えし新たなる勇者よ
そして、確固たる一つの声。
空気を震わせ、鼓膜を打つ一つの声がこの場に響き渡る。
「ッ!?え?な、何!?」
「ちょっと遅くなかったかしら?」
その声に対する反応は二人は正反対だった。
───汝らに祝福を、汝らに、新たなる力を
「……ん?」
───盟友の存在の寵愛を受けし者への大いなる祝福を。
「え?待って、なにそれ?」
このイベントを。
情報に疎いご主人以外であれば当然知っているダンジョン10階層を攻略したときにもらえる祝福について知っている珠美は自分の知っているものとは違う口上に首を傾げる。
まぁ、基本的になんかあったら僕のせいだ。
「あー、あー、よし。ちゃんと喋れているな」
「ほへ!?」
当然のように僕の方へと視線を送ってきた珠美は、いつものスライムの姿ではなく、スライムで作った椅子の上に座り、人の姿となった僕を見て驚愕の声を上げる。
「これで僕も人の姿を得た。僕の名はイム。改めてよろしく頼むよ?ふたりとも」
自身で作った椅子の上に座る僕は人の姿を取って己を前にして驚愕の表情を浮かべるご主人と珠美に対して己の口から直接自己紹介の言葉を口にした。
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