第32話
僕たちとフェンリルの戦いは苛烈を極める。
「……ッ!は、っやいッ!!!」
自由自在に動き回るフェンリルに食らいついていく珠美は表情を引き攣らせながら剣を振るう。
「が、頑張れー!」
パワータイプ寄りであるご主人は全然斧が当たらず、ついでにフェンリルも最初の一撃をもらってから全然ご主人の方にちかづこうとしないため、すごく暇することとなったご主人は応援の声を上げている。
「イムッ!助けてぇ!」
『ほいほいのほーい』
僕は必死こいて戦う珠美を支援する魔法を次々と発動させていく。
『ラスボス戦には見合わないけど……ちょっとずつ状態異常で削っていっちゃうよー』
その傍ら、毒魔法などを使って継続的に小さなダメージをフェンリルへと蓄積させていく。
コメント
・怪奇、ダンジョン10階層で応援の声を上げる一人の少女
・いつの間にかイムちゃんとそのご主人の立ち位置が変わっているw
・イムちゃんの支援ありとは言え単独でフェンリルと戦っているリンタナちゃん強いな。
・本当に高校生か?
・イムちゃんマジで何でも出来るやん
「……想像以上にキツイ」
僕の支援を受ける珠美が冷や汗を垂らし、歯を食いしばりながらフェンリルの攻撃をさばき続ける……うーん、そんなに長くは続かないかなぁ。
飼い主とテイムされた魔物はなんとなくの感覚ではあるが、心が繋がっている。
本来は魔物へと飼い主が命令を下すために使うこの機能を使って僕はご主人へとこう動いて欲しいと希望を出す。
「……」
それに対してご主人が頷く……よし。
『轟け、雷鳴』
僕は杖の一振りで魔法を発動。
「キャンッ!?」
杖より飛び出す雷槌はフェンリルの体を焦がし、一瞬だけ体を止める。
「やぁッ!」
ご主人はそのタイミングで重い斧を捨てて疾走。
フェンリルへと抱きつき、その体を地面へと押さえつける。
「ちょ!?」
「えい、えい、えい、えいや!」
そして、そのままご主人はフェンリルへと馬乗りの状態になったまま拳を振るい、振るい、振るう。
ただひたすらにご主人は拳を繰り出し続けた。
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