第31話

 ダンジョン第十階層。

 五の倍数の階層であり、強力なボスが唯一人、立ちふさがるボス階層。


「……いよいよね」

 

 第九階層を楽々と進んだ僕たちは第十階層へと降り、ボスの待つ部屋へと入る扉の前へとやってきていた。


「準備は出来ているかしら?」


「もちろん!」

 

 珠美の言葉にご主人は元気良く頷く。


「じゃあ……行くわよ」


『フライング、ドーンッ!!!』 

 

 僕は珠美が前に出るよりも前に扉へと突撃。

 扉を開けて中へと入る。


「ちょッ!?」


「あっ……ッ!」

 

 当然の僕の凶行に対して驚愕する珠美とご主人。


「アォーンッ!」

 

 そして、中にいた巨大な狼。

 白銀の毛並みを靡かせ、金色の瞳を爛々と輝かせるその巨大な狼は空気を震わすほどの咆哮を上げ、いの一番に入った僕を睨みつけてくる。


コメント

・こっわ!

・やべぇな、こいつ

・イムちゃんに触手責めされたいよぉ

・というか、フライング、ドーン!じゃないんだわw

・この怪物と今から戦うのか…

・かっけぇな、この狼。


「何やっているのよッ!この、馬鹿ッ!」

 

 大慌てで珠美とご主人も中へと入ってきて、僕よりも前に立つ。


「何先走っているのよッ!?」


『いや、おもろそうかなかな、って。配信意識。配信映え』


「ぼ、ボス階層で考えることじゃないのよッ!」


『ツッコミもほとほどにね?敵もそろそろ来るよ」


「貴方に言われたくはないわッ!リーフ!」


「『祝福』」

 

 ご主人はスキルを発動……今回の祝福は攻撃力である。


『むむぅ……』

 

 ご主人のスキルによる補正。

 これがどれくらいのものなのか、あまり判別出来ない。僕が強すぎてご主人の祝福は海に水滴を一つ垂らすようなものなのだ。

 まぁ、他の二人にでも合わせれば良いか。


「はぁぁッ!!!」

 

 ご主人が自分の元へと向かってくる巨大な狼の魔物、フェンリルに向かって豪快に斧で一振り。

 

「キャン!?」

 

 大ぶりで隙だらけの攻撃に速度を誇る、獣、狼たるフェンリルが避けれぬはずがない。

 しかし、僕が魔法を使って一瞬だけフェンリルの動きを止めたことで彼は避けることに失敗し、ご主人の重い一撃を喰らう。


『先手必勝。この一手は大きいよ?さぁさぁ、前代未聞。学生探索者のダンジョン10階層の攻略のスタートだよ』

 

 僕は気分良くプラカードを掲げ、カメラに映した。

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