第26話

 まさにドリームマッチ。

 日本最強パーティーである勇者たちと日本の地上を自由に歩くスライムたる僕の戦いが急遽開催された。


「ここなら問題ないかな?」

 

 勇者の家の地下にあるバカ広い地下室へとやってきた僕たち。

 ご主人と珠美は違う階層で実況中、勇者パーティーは僕の前で完全武装で立っている。

 撮影用のドローンも元気に空で動いている。


『僕の残機の数は優に億を超える……ッ!殺すつもりで来たまえッ!勇者よッ!!!』

 

 勇者パーティーの前に立つ僕は王冠の中央からにゅるんとプラカードを出す。


「ははは、そうだね」

 

 僕の言葉に悠馬くんは自身のスキルで作り出した聖剣を構えながら頷く。


「さぁ……お前ら、行くぞ」

 

 悠馬くんの雰囲気が一変する。

 優男から荒々しい戦士のものへと。


「「「「おう」」」」

 

 それに対して他の四人の雰囲気は一変。

 死地を我が空間とする戦士のものへと。


『流石に早いね』

 

 一瞬で距離を詰めてきた悠馬くんによる聖剣の攻撃に僕はちょくでぶつかり、地面を転がる。


『ぐぇッ!?』

 

 僕は口から大量の血……もとい、スライムを吐いて体を震わせる。


『く、くくく……これで終わったと思うなよ。第二、第三の僕が必ず……ッ!』 

 

 僕はさながらラスボスのような捨て台詞を残し、地面に倒れ……その体を消滅させる。


「……は?」


 光の粒となって僕の体が消えた……この現実を前にさすがの悠馬くんも硬直せざるを得ない。


『どうも、第二の僕です』


『第三の僕です』

 

 そんなことをしている間に一度天に昇った光の粒は、再び地面へと降り立って第二、第三の僕を作り出す。

 何事もなかったのようにサクッと復活した僕は跳躍。

 二つの体で地面を滑り、一瞬で移動……魔法使いである桜さんと回復職である高峰さんに向かってプラカードを一閃。


「はっ!?」


「……ぐっ」


『ふっ、魔王たる我が伝説の装備、プラカードがまた血を吸ってしまった……』

 

 呆気なく気絶した二人を更に分裂した自分の体で包んで部屋の奥へと運びながら僕はプラカードを抱える。……高峰さん加齢臭やばっ!?嗅覚きっとこ。


『よっと』

 

 二人いたらドローン君もどちらを取ればいいか困るだろうし、人海戦術も楽しくないだろう。

 僕は再び一人へと戻る。


『さて、後衛二人いなくなり、君たちの攻撃は僕に茶番をさせた程度で終わったけど……続きをやっていこうか』

 

 僕は冷や汗を流す悠馬くんたちの前で不敵にプラカードを掲げた。

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