第20話

 ダンジョン内での配信活動には問題が多い。

 単純に極限の集中力を必要とする命のやり取りにおいてコメント欄を見ながらそれと会話するのに集中力を割くなど愚策でしかないし、声を出すという行為そのものも魔物を惹きつける大きな問題だ。

 だからこそ、基本的にダンジョン配信者は絶対に安全なところで潜り、命の危機ないような階層で、ダンジョンからの資源採取と配信での収益で儲けているのだ。


 だがしかし、それらの問題はこのアイオーンチャンネルには存在しない。

 そう───何故ならコメント欄と会話しているのは戦っているご主人ではなく後ろからついていっているだけの僕!

 言葉は察さず、プラカードと手話で会話を行う僕!

  

 ダンジョン配信における全ての問題は全て僕が解決……!本チャンネルはご主人と珠美の戦闘をスライムである僕が実況解説するチャンネルとなっているのだ!

 時折、実況解説を放棄して視聴者と僕がコメント欄で交流していることもあるけど。


「……いるわね」


「……そうだね」

 

 極限の注意を払いながらダンジョンを突き進むご主人たちの後ろで。


『いやぁー、スキンケアねぇ。ぷるぷるぼでぃな僕にとっては縁のない話だし、ご主人も生まれながらに玉のお肌だからなぁ。あっ!ちなみにスライムである僕は肌のお肌の汚れだけをパクパク食べる事ができるからお肌のスキンケアは僕一つで完璧だよ!ご主人のとか食べて綺麗にしてあげているし』


 全然関係ないスキンケアの話をしていた。


コメント

・待って、めっちゃ欲しいんだけど。

・スライム便利過ぎじゃない!?

・クソ羨ましいだが……

・魔物でさえも簡単に溶かし尽くすスライムの体でお肌の汚れを食べるのか。


 真剣なご主人たちのことなどそっちのけである。


コメント

・こう、なんとかしてスライム販売してくれないかな?

・イムちゃんに食べられて死ぬのであればそれでいい。というか食べられて死にたい!

・いつか一家に一台的なノリでスライムが配られるのか……イムちゃんの独裁国家完成やん。

・一応学生としては最高峰のダンジョン階層、第七層での配信なのにも関わらず全然注目されてないのかわいそす。


 僕の目にご主人たちについて触れるコメを見つける。


『あぁ……そろそろご主人たちにも触れようか』

 

 第七層の魔物と戦闘を始めたご主人の方へと僕は視線を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る