第7話

 僕の飼い主たる少女を金持ちとする。

 別にそれはあまり難しくない……そもそもとして前世の時点で僕はかなり強い部類の冒険者であり、スライムとなった僕はその前世よりも強い。

 少女のテイムされし魔物として彼女のために僕が働くだけで金持ちとなれるだろう。

 冒険者は稼げるんだ。

 

 だが、それじゃああまり意味はない。

 お金を稼いでくるペットがいるだろうか?自ら主体的に動いてお金を稼ぐペットが何処にいる。

 僕は美少女のペットになりたいのである。


「おーい、予令なったぞー。座れー、授業するぞぉ」

 

 だからこそ、金持ちになるための道は少女が歩んでくれなければ。

 

「はぁー、授業か」


「んっ」


「えっと……教科書は……」

 

 とある公立の高校へと通学した少女の頭の上に立ち、ぼけーっとしている僕は懐かしの高校を見渡す。

 前世の僕も高校生だった……全然通っていない不登校児だったけど。


「……」

 

 僕の飼い主である少女は無言で、誰とも関わることなくボロボロのカバンから教科書を取り出し、安いシャーペンを一本だけ取り出す。


「よし、全員。座ったな。授業を始めるぞ。気をつけ、礼」


「「「よろしくお願いします」」」

 

 淡々と授業が始まっていく。

 たとえ高校が違ったとしても、この流れが変わることはない。


「前回はダンジョン氾濫が起こり、世界から遮断された日本がどうやって国を安定させてきたか、苦難の十年間を話していったな」

 

 現代日本史。

 ダンジョンが出来てからの日本の歴史の授業を少女とともに僕はぼーっと眺める。


「苦難の十年間の後、日本政府が行った政策のなかで最も大きかったのは探索者制度の確立だろう。まともなルールがなかった中、ダンジョンへと潜る探索者並びにダンジョンそのものを管理するダンジョン庁を作り、法を整備し、ダンジョン大臣を内閣へと加えた。探索者の管理。これによって日本の治安は劇的に改善した」


 先生が黒板へと書く文字を板書しながら話を聞く少女の上でテストのために勉強した内容を再び先生から聞く。


「個々の実力を正確に記すステータス制度。総合的な戦闘能力で判断して作られたランキング制度。圧倒的な一位である女性、有馬水樹率いる探索者パーティーが治安の維持のため、日本政府に最大限協力するという旨の宣言。これらが今まで驕り高ぶってた探索者たちの驕りをへし折った」


 井の中の蛙であると知った探索者たちの横暴な行動は次第に薄れ、乱暴な探索者の多くが捕まっていく。

 圧倒的な力を振るっていた乱暴な探索者が豚箱へと打ち込まれていく中で日本の治安はどんどん良くなっていくのだ。

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