第4話
唯一、家としての機能を果たしているアパートの一部屋へと入る僕と少女……埃っぽくて床にゴミまで散乱しているような汚部屋へと僕たちは入ったのだ。
「……ぷぎぃ」
潔癖症とまでは言えないが、それでもどちらかと言うときれい好きよりの僕はこんな部屋の現状に納得できない。
少女の胸から飛び出して自身の体を広げていく。
「わわっ!?」
少女の驚く声を聞きながら僕は部屋全体を飲み込んでごっくんちょ。
部屋の中のゴミをすべてスライムである自身の体に取り込んでいただきます。ゴミを完全に溶かしていく。
「ぺっ!」
ゴミの中でも使う可能性のある割りばしとかは一切のゴミや汚れなどの一切を取り除いで吐き出す。
「ぷぎぃぃぃぃいいいいい!!!!!」
そして、僕は体を更に広げ、より繊細に、より丁寧に動かしていく。
壊れている道具は自分の体を代用することで穴を埋め……道具どころか普通に家へと空いている穴にも自分の体を流し込んで塞いでいく
スライムの体は便利だ……自由に見た目も性質も変えられる。
完璧な形で的確にこの家を生まれ変わらせる。
「ぷぎぃー」
数分もすれば完璧だ。
完全に掃除も、整理整頓も、物の修復も完了。
僕でも納得できるだけの狭い家となった。
「す、すごい……」
僕による大改造を側で見ていた少女が感嘆の声を漏らす。
「ぷぎぃ」
大仕事を終えた僕は跳躍、少女の頭の上へと乗っかる。
「……って!驚いている場合じゃないや。夕食作らないと。お母さんが帰ってきちゃう」
しばらく呆然としていた少女が機敏に動き出し、本当に小さな冷蔵庫を開けて料理を作り始める。
「……」
僕は目の前で繰り広げられる料理を見て勝手に心を痛める……や、やっぱり今の日本の格差凄いな。
「……」
せっせとそこらへんに生えている雑草に虫、ちょっと悪くなっている食品を使って料理を作る少女。
格差が酷いことは知っていた……だが、ここまでとはちょっと思わなかった。
しっかりとした定職に就き、仕事を営んで金銭を稼いでいる人間は豊かな食事に広い家で優雅に暮らしている。
何も上流階級だけの話ではない……日本人口の約七割ほどがそんな豊かさに満ち溢れた生活をしている……だけど、日本政府から後回しにされた残りの三割は……いや、もはやスライムでしかない僕が考えても仕方ないの無いことだな。
「ふんふんふーん。道具が使いやすい!ありがとね、スライムちゃん!」
「……ぷぎぃ」
僕は無邪気に喜ぶ少女の言葉に対して、泣き声を一つ返した。
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