第8話 ストーブ

当時の我が家は、まだ貧しく冬になるとコタツが買えませんでした。

ですから、ストーブだけの生活を1年間していました。


私の借りていた部屋は、角部屋の1階で日も当たらない部屋でした。

昼間でも電気を付けないと薄暗い部屋でした。


しかし、大家さんはとても良い人で、リュウの話しをしても「人に迷惑をかけなければ飼っても構いませんよ」といってくれる人でした。


そんなある寒い冬の日の事。

リュウは相当寒かったのでしょう。


私もキッチンに居てとても寒かったのを覚えています。

リュウはストーブを背にして温まっていました。


暫くすると、何かこげた匂いがしてきました。

「ん?なんの匂いだろ?」と私は思いました。


そして、6畳の部屋で温まっているリュウを見ました。

その瞬間!!!!!!!


「リュウゥウウウウウウウウウウ!!!!!」

と、叫んでしまいました!!!


だって、リュウの背中の毛がストーブの火でこげて焼かれていたのです!

急いで、リュウを抱きかかえ、焼かれた部分の毛を綺麗にブラッシングしてあげました。


リュウはと言えば、「おかあしゃん、何かあったの?あたし温まってたのにー!」

と、ブーたれている様でした。


「リュウちゃんね、あんまりストーブの側にいくと危ないから、近くにいかないんだよ?分かった?」

と、話しかけてもどこ吹く風。


私の手から離すとまた、ストーブを背にして温まり始めました。

私は気が気ではありませんでした。


1日でも早く、リュウの為にコタツを買ってあげなくてはと、思いました。

でも、焼けどしなくて良かったです。


しかし、その後も知らず、知らずリュウは時々、背中の毛をこがして来ることがありました。

その度に私はリュウの背中をブラッシングしてあげていたのです。


リュウのおかしな話しはまだまだ続きます。

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